離婚・男女問題などでお悩みの方は
ご相談ください
養育費は増額できる?基本ルールと考え方

離婚時に取り決めた養育費であっても、一定の条件を満たせば増額を請求することが法律上認められています。
ただし、単に「養育費が足りないから増額したい」という要望だけでの変更は難しく、客観的に見て合理的な理由が必要です。
ここでは、養育費増額の基本的な考え方を整理します。
一度決めた養育費も「事情の変更」があれば見直し可能
養育費は一度決定されても、家庭裁判所が認める「事情の変更」があれば、当事者の協議や裁判手続きによって見直すことが可能です。
民法第880条では、扶養の程度や方法について協議または審判で一度決めた後も、事情に変更があった場合には、家庭裁判所がその内容の変更または取消しをすることができると定められています。
(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。
引用:民法 e-GOV法令検索
つまり、離婚後に予期せぬ事情が発生した場合、この規定に基づいて養育費の額を再度協議できます。ただし、「事情の変更」が客観的に認められるかどうかという点が大切です。
増額には「予測できなかった事情」が必要
養育費の増額が認められるためには、離婚時には予測できなかった重大な事情の変化が必要です。
具体的には、以下のような事情が当てはまります。
- 子どもが病気や事故により、長期治療や入院が必要になった
- 子どもが私立学校へ進学したり留学したりして、当初想定していなかった教育費が必要になった
- 受け取る側の親が予期せぬリストラや病気により、収入が大幅に減少した
- 子どもに障害が判明し、特別な医療費や療育費用が継続的に必要になった
一方で、離婚時に既に予測可能だった事情などは、原則として増額理由としては認められない可能性があります。例えば、離婚時に子どもが大学に進学することが確定していたにもかかわらず、これをわざわざ考慮せずに養育費を取り決めたような場合、後で増額を請求しても理由として認められない可能性があります。当初の養育費の取り決めで、大学進学費用を考慮していたかどうかが重要です。
算定表の改定だけでは増額の理由にならない
2019年12月に養育費算定表が改定され、全体的に養育費の金額が引き上げられました。
しかし、算定表が改定されただけで、既に決めた養育費を増額することはできません。
新算定表は、現時点の経済状況を踏まえた指標にすぎず、法的には当事者の合意または裁判所の判断がない限り、既存の合意や調停の内容を自動的に変更する効力はないのが実情です。
既に養育費を定めている場合、新算定表で計算すれば増額になるとしても、それだけでは「事情の変更」になりません。
養育費の増額を求めるには、収入の増減、子どもの病気や進学など、当時は予想できなかった具体的な事情の変更を示す必要があります。
なお、このような事情変更があり、再度協議を行って養育費を決め直す場合には、再計算の際に新しい算定表が使われます。
参照:裁判所 平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
養育費を増額できる要件と主なケース

養育費を増額するためには、単なる希望や感情ではなく、客観的に認められる事情の変化が必要です。
家庭裁判所では、収入の変動や子どもの進学・医療費の増加など、当初の取り決め時には予測できなかった事情があるかどうかを重視して判断します。
ここでは、実際に増額が認められやすい代表的なケースと、その根拠となる要件を詳しく解説します。
1.支払う側の収入が大幅に増えた場合
養育費を支払う側の収入が、離婚時と比べて大幅に増加した場合、増額請求が認められる可能性があります。
ただし、わずかな収入増では増額は認められず、一定以上の大幅な収入変化があることが必要です。
目安としては、以下のような変化が該当します。
| 収入変化の例 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 昇進・昇給で年収が増加した場合 | 給与明細や源泉徴収票などで、継続的かつ安定した収入増加を客観的に証明できるか確認する |
| 転職で年収が増加した場合 | 転職後の収入が一時的ではなく安定していることを示す資料(給与明細・雇用契約書など)が必要 |
| 起業や独立で収入が大幅に増えた | 確定申告書や帳簿により、一定期間の安定した収入実績を示すことが必要。事業開始直後の一時的な売上では認められにくい |
また、収入増加が認められるには、継続的かつ安定した収入増加であることを客観的に証明する必要があります。
一時的な臨時収入(退職金、ボーナスの一時的増加など)や不安定な副業収入は、増額理由として認められないのが基本です。
相手方の収入を調べるには、調停で源泉徴収票の開示請求を行うのが基本ですが、調停前に弁護士に相談することで、効果的な調査方法のアドバイスを受けるのが賢明です。
2.受け取る側の収入が減少した場合
養育費を受け取る側の収入が、予期せぬ事情で大幅に減少した場合も、増額理由として認められる可能性があります。
具体的には以下のようなケースです。
| 収入減少の理由 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 勤務先の倒産・リストラによる失業 | 自己責任によらない失業であることを証明できるかが重要。 |
| 病気や怪我で働けなくなった場合 | 医師の診断書などで労働できない実態を示す必要がある。 |
| 介護のために労働時間を減らした場合 | やむを得ない事情として認められるケースがある。 |
| 勤務先の業績悪化による給与削減 | 給与明細の比較などで、客観的な減収を示す必要がある。 |
ただし、増額が認められるのは、本人に責任のない収入減少に限られます。正当な理由なく自主退職した場合や、努力不足による収入減少は、増額理由として認められません。
さらに、収入減少を証明するためには、離職票・給与明細の比較・医師の診断書などの客観的な資料を準備することが求められます。
3.子どもの進学や留学で教育費が増加した場合
子どもの私立学校への進学や留学など、当初想定していなかった高額な教育費が必要になった場合、養育費の増額理由になる可能性があります。
具体的には以下のようなケースです。
| 教育費増加の理由 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 私立中学・高校・大学への進学 | 養育費の取り決め時に私立進学を想定していたか確認し、協議内容に進学費用が考慮されていない場合は、増額が認められる可能性もある。 ただし、相手の収入・学歴・地位から不合理でないことが必要である。相手の承諾があることが望ましい。 |
| 海外留学 | 授業料や滞在費などの具体的な支出額を示すとともに、留学の必要性を説明することが重要。相手の承諾があることが望ましい。 |
| 医学部など高額な学費 | 養育費の取り決め時に想定していなかった進学であることと、相手の収入・学歴から不合理でないことを示す必要がある。相手の承諾があることが望ましい。 |
教育費の増加を理由に増額請求する場合、離婚時の取り決めで、その教育費を想定していなかったことが重要です。
離婚時に既に進学の可能性を話し合っていた場合や、養育費の計算にその費用が含まれていた場合は、増額は認められにくくなります。
ただし、当初は大学進学を想定せず「高校卒業まで」としていた場合や、国公立大学を想定していたが私立大学や医学部などに進学した場合は、増額が認められる可能性があります。
また、教育費の増額が認められるには、支払う側の収入・学歴・社会的地位から見て不合理でない(高収入で高学歴の場合など)ことも条件のひとつです。
4.子どもの病気や怪我で医療費が増加した場合
医療費の増加は、離婚時には全く予測できなかった事情であることが一般的なため、家庭裁判所でも増額が認められやすい傾向にあります。
特に、継続的な治療が必要な重大な病気や、高額な医療費を伴う怪我などは、予測できなかった医療費の代表例です。養育費の増額請求において正当性がある理由の一つとされています。
具体的には以下のようなケースです。
| 医療費増加の理由 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| 重大な病気の発症(がん・心疾患など) | 診断書で病名と治療の必要性を明示し、治療費の領収書や治療計画書で継続的な医療費の発生を証明する。 |
| 事故による長期治療の必要性 | 診断書や事故証明書などで事故状況を示し、リハビリ等の長期治療計画書、また将来的な治療費の見込み額も提示する。 |
| 発達障害の判明による療育費用 | 医師または専門機関の診断書などで発達障害の確定診断を示し、療育プログラム費用の明細や通院費の実績を提出する。 |
| アレルギーなどによる特別な生活環境の整備 | 診断書で重症度と特別対応の必要性を証明し、特別食材・設備費用の明細や、これらの費用が継続的に発生することを明確にする。 |
ただし、風邪やインフルエンザなどの一時的な病気は、通常の生活費の範囲内で対応できると考えられるため、増額理由としては認められません。
養育費の増額が認められるのは、離婚時には予測できなかった重大な病気や怪我により、継続的かつ高額な医療費が必要になった場合に限られます。
そのため、増額請求を行う際は、病気や怪我が「重大で継続的である」ことを明確に示すことが重要です。
診断書や治療計画など、継続的に医療費が発生することを証明する必要があります。
養育費の増額が難しい・認められないケース

養育費の増額を請求しても、すべてのケースで認められるわけではありません。状況によっては、法的根拠や事情の変化が不十分と判断され、申立てが却下されることもあります。
あらかじめ「増額が難しいケース」を理解しておくことで、無駄な手続きを避け、より現実的な対応方針を立てることが大切です。
ここでは、増額が認められにくい代表的なケースを詳しく解説します。
1.支払う側の収入が大幅に減っている場合
養育費を支払う側の収入が減少している場合、増額請求を認めてもらうのは難しい状況です。
民法第880条の「事情の変更」は、受け取る側に有利な変化だけでなく、支払う側の不利な変化も考慮されます。
支払う側の収入が減少している場合、増額請求は「公平性」の観点から認められにくく、むしろ支払う側から減額請求をされる可能性も否定できません。
具体的には、以下のようなケースです。
| 収入減少の理由 | 増額請求への影響 |
|---|---|
| 失業・リストラ | 支払う側の収入がゼロまたは大幅に減少しており、現状維持も困難な状況。 |
| 病気・怪我による休職 | 休職中は収入が減少しており、支払う側も生活が困窮している可能性がある。 |
| 転職による年収減少 | 自己都合かやむを得ない転職かによって判断が分かれるため、収入減少が客観的に証明される場合は増額が困難になる。 |
| 再婚・新たな扶養家族の発生 | 支払う側に新たな扶養義務が生じているため、増額は難しい可能性がある。養育費算定表でも扶養家族の増加は考慮要素とされる。 |
支払う側の経済状況が悪化している場合、増額請求よりも現在の養育費が支払われる状態を維持することを優先すべきです。
どうしても生活費が不足する場合は、児童扶養手当や児童手当などを充てて賄うことを検討しましょう。支払う側の収入が回復した時点で、改めて増額請求することも現実的な選択肢です。
2.受け取る側の収入が増えた場合
養育費は、両親の収入バランスに基づいて算定されます。
受け取る側の収入が増えた場合、子どもの生活水準がすでに向上しているとみなされるため、増額の必要性は低いと判断されがちです。
養育費算定表でも、受け取る側の収入が高くなるほど、支払う側が負担すべき養育費の金額は減少する仕組みになっています。
そのため、受け取る側の収入増加は、増額請求にとって不利な要素として扱われるのが一般的です。
| 収入増加の理由 | 増額請求への影響 |
|---|---|
| 昇進や転職による大幅な年収アップ | 子どもの生活水準がすでに向上していると判断されるため、増額は認められにくく、むしろ支払う側から減額請求を受ける可能性がある。 |
| 再婚相手の収入による経済的余裕の発生 | 再婚相手と子どもが養子縁組していなくても、世帯全体の収入増加として考慮される場合があるため、経済的余裕があると判断されれば増額は困難となる可能性がある。 |
| 相続や不動産収入などの資産増加 | 相続財産は考慮されない場合もあるが、不動産収入など定期的な収益は影響する。 |
ただし、受け取る側の収入が増加していても、子どもの医療費や特別な教育費など、離婚時には予測できなかった特別な支出が発生した場合は、増額が認められるケースもあります。
重要なのは「子どものために必要な支出が増えたかどうか」という点です。
受け取る側の収入増加があっても、それを上回る子どもの支出増加があれば、増額理由として認められる可能性があります。
3.一括払いで既に受け取り済みの場合
養育費を一括で受け取る合意をし、既に全額を受領している場合は、基本的に追加の増額請求はできません。
養育費の一括払いは、将来の事情変更のリスクを双方が承知した上で、以下のように合意したものと解釈されます。
| 立場 | 一括払いに込められた意味 |
|---|---|
| 受け取る側 | 将来的な事情変更を含め、追加請求を行わないことを了承して受領。 |
| 支払う側 | 一度の支払いで義務をすべて果たしたとみなされ、再請求を受けない前提で支払い。 |
そのため、一括払いで養育費を受け取った後に、受け取る側の収入が減少した場合や、子どもの教育費が増加した場合でも、原則として追加の増額請求は認められません。
ただし、合意内容の記載によっては追加請求できる可能性もあります。
たとえば、養育費の一括払いに関する合意書や公正証書に、支払いの対象期間や金額だけが記載されている場合です。それ以外の事情に関する取り決めがない場合は、想定外の事態が起きた際に追加請求できる可能性があります。
また、「予測できなかった重大な事情が発生した場合は、別途協議する」といった条項が設けられている場合も同様です。こうした場合には、重大な事情変更を理由に家庭裁判所へ調停を申立てることができます。
重要なのは、一括払いの合意書や公正証書にどのように記載されているかです。「今後一切の請求をしない」と明記されている場合、追加請求は難しくなる点に注意が必要です。
4.正当な理由のない増額請求を行う場合
単に「生活が苦しい」「もっとお金が欲しい」といった主観的な理由だけでは、養育費の増額は認められません。
家庭裁判所は、申立人側の努力不足や一時的な経済的困窮では、「法的な要件を満たさない」と判断する可能性が高くなるからです。増額請求には客観的かつ合理的な理由が必要となります。
以下は正当な理由にはならないケースです。
- 浪費やギャンブルなど、自己責任による家計の悪化
- 自己都合の退職や転職による収入減少
- 生活水準を上げることを目的とした請求
- 具体的な支出根拠や証拠のない漠然とした主張
これらの理由による増額請求は、調停や審判でも「事情の変更」に該当しないと判断されます。
養育費の見直しを求める場合は、支出の増加を裏付ける領収書や教育費・医療費の明細、家計簿などの客観的証拠を整理したうえで申立てを行うことが重要です。
感情的に請求を進めると、かえって信用を損ない、次回以降の交渉や審理にも不利に働く可能性があります。必ず事前に専門家へ相談し、自分のケースが「法的に正当な増額理由」に該当するかを確認してから行動することが大切です。
養育費を増額する方法

養育費の増額を実現するためには、段階を踏んで正しい手続きを行うことが重要です。
まずは当事者間での話し合いを試み、それで合意に至れば公正証書を作成したり、それでも合意に至らない場合には、法的な手続き(調停・審判)へと進むのが一般的な流れとなります。
なお、増額が認められた場合の適用開始は、原則として請求(申立て)時以降です。過去にさかのぼる増額は例外的なので、事情変更が生じた時点で早めに請求することが重要です。
1.当事者同士の話し合いで合意を目指す
まずは相手方と直接話し合い、合意を目指すことが基本です。裁判所の手続きを経ずに済むため、時間や費用を節約できます。話し合いを成功させるポイントは以下の通りです。
- 感情的にならず、冷静に事実を伝える
- 増額が必要な理由を具体的な資料で説明する
- 相手の経済状況にも配慮した現実的な金額を提案する
- 子どもの利益を最優先にする姿勢を示す
話し合いの際は、給与明細・医療費の領収書・学費の請求書など、客観的な資料を準備しておきましょう。
感情論ではなく、事実に基づいた説明が相手の理解を得やすくします。また、直接会うことが難しい場合は、メールや手紙で丁寧に状況を説明する方法も有効です。
2.合意内容を公正証書にして強制執行できる形にする
話し合いで合意に至った場合、必ず書面化することが重要です。公正証書にしておくことで、将来の不払いに備えた強制執行が可能になります。
書面化による法的な効力の違いは、以下の通りです。
| 書面の種類 | 強制執行 | 作成場所 |
|---|---|---|
| 口頭合意 | 不可 | ― |
| 私文書(合意書) | 不可 | 自宅など |
| 公正証書 | 可能 | 公証役場 |
公正証書には「強制執行認諾文言《きょうせいしっこうにんだくもんごん》」を必ず入れましょう。これにより、相手が約束を守らない場合、訴訟を経ずに給与差し押さえなどの強制執行が可能になります。
公正証書の作成には双方の同意と公証役場での手続きが必要ですが、将来のトラブル防止には非常に有効です。
3.内容証明郵便で増額を正式に請求する
話し合いに応じてもらえない場合や、相手との連絡が取りにくい場合は、内容証明郵便で増額請求を行うことが有効です。
内容証明郵便とは、郵便局が「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を証明できます。
内容証明郵便を活用するメリットは、以下の通りです。
- 請求した事実が記録される
- 相手に対して心理的プレッシャーを与えられる
- 後の調停や裁判で有利な証拠になる
内容証明郵便には、増額を求める理由・希望する金額・回答期限などを明確に記載します。ただし、内容証明郵便自体に法的強制力はないため、相手が応じない場合は次の段階への対応を進めましょう。
4.家庭裁判所に「養育費増額調停」を申し立てる
話し合いや内容証明郵便を送っても解決しない場合は、家庭裁判所に養育費増額調停を申し立てましょう。養育費増額調停では、調停委員が中立的な立場で双方の意見を聞き、合意に向けた話し合いをサポートしてくれます。
養育費増額調停の申立て手順は、以下の通りです。
| 手続きの段階 | 内容・ポイント |
|---|---|
| ① 申立ての準備 | 必要書類(申立書・戸籍謄本・収入資料など)を揃え、申立書に増額を求める具体的な事情(収入減・教育費・医療費など)を記載。 |
| ② 家庭裁判所への申立て | 原則として相手方(支払う側)の住所地を管轄する家庭裁判所に提出。収入印紙や郵便切手などの費用を納付。 |
| ③ 期日の通知・呼出し | 家庭裁判所から当事者に期日(調停日)の通知が届く。呼出状には出席日時と持参書類が記載されている。 |
| ④ 調停期日の実施 | 調停委員2名が双方の主張を聴取。合意を目指して調整が行われる。合意に至れば調停成立となり、調書が作成される。 |
養育費増額調停を有利に進めるためには、事情の変更を客観的に証明できる資料の準備が不可欠です。
具体的には、収入変化を示す給与明細、子どもの病気に関する診断書、進学にかかる学費の納付書など、事情変更を証明できる資料を準備する必要があります。
5.調停が不成立の場合は審判で裁判所に判断を委ねる
養育費増額調停で双方の合意が得られなかった場合、自動的に審判手続きに移行します。審判では、裁判官が双方の主張と証拠を総合的に判断し、養育費の額を決定します。
調停と審判では、どちらも強制執行が可能です。
| 手続き | 特徴・内容 |
|---|---|
| 調停 | 家庭裁判所で調停委員を介して話し合いによる合意形成を目指す手続き。双方が合意すれば、調停調書が作成され強制執行が可能となる。 |
| 審判 | 調停が不成立の場合に自動的に移行。裁判官が双方の主張と証拠をもとに養育費の金額を決定する。確定すれば強制執行が可能となる。 |
審判では、養育費算定表を基準としつつ、個別の事情が考慮されます。審判で養育費の増額が認められるかは、調停と同じく主張内容に根拠があるかどうかが重要です。
養育費の増額が認められた判例・事例
実際に養育費の増額が認められたケースを知ることで、自分の状況と比較し、増額の可能性を判断できます。ここでは、実際に弊所が扱った成功事例を紹介します。
弊所が扱った事例では、既に取り決めていた養育費について、調停内外での粘り強い交渉により「算定表よりも高額な金額」での増額合意を実現しました。
この事例では、相手方に対して継続的に対案を提示することで、依頼者の経済的利益の向上を図ることができています。以下の条件で、交渉を進めた結果となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 依頼者 | 妻(30代) |
| 相手方 | 夫(30代) |
| 離婚原因 | 性格の不一致 |
| 争点 | 面会交流、養育費の金額 |
| 弁護士の対応 | 調停内外での交渉および依頼者への説明・説得 |
| 結果 | 算定表よりも高額な養育費で合意成立 |
| 解決のポイント | 相手方に対して継続的に対案を提示し、柔軟な合意形成を図ったこと |
弊所事例:養育費の増額に成功した事例 – 弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所
養育費の増額請求では、収入状況の変化や子どもの教育費増加などの「事情変更」を適切に主張し、算定表に基づく適正な金額を提示することが重要です。弁護士による専門的な交渉技術により、当初の取り決めから増額での合意に至る可能性があります。
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所では、養育費問題に精通した弁護士が初回相談から丁寧に対応し、一人ひとりの状況に合わせた最適な解決策を提案しています。まずはお気軽にご相談ください。
養育費の増額請求が拒否された場合の対処法
養育費の増額請求が認められなかったとしても、すぐに諦める必要はありません。拒否された理由を分析し、適切な対応を取ることで、将来的に増額を実現できる可能性があります。
増額が認められない主な理由としては、以下のようなケースです。
- 事情変更の証拠が不十分だった
- 相手方の収入が実際には増えていなかった
- 受け取る側の収入も増加していた
- 増額の必要性が客観的に証明できなかった
証拠不足が原因だった場合は、相手方の収入増加を示す資料や子どもの教育費に関する詳細な費用明細などを追加で収集し、将来的に再度調停を申し立てることが可能です。
養育費増額調停が不成立に終わった場合は、自動的に審判手続きに移行するため、専門家のサポートが重要になります。
また、養育費の増額が難しい場合でも、現在の養育費が確実に支払われるよう公正証書や調停調書を整備し、不払いに備えることが大切です。
養育費を基準値よりも高く獲得した事例
実際に弊所にご相談いただき解決した事例を紹介します。
当事務所の対応
調停内での金額の交渉。
【結果】
養育費について、算定表の基準より高額な金額で合意を成立させた結果、依頼者が得る利益の総額を増額させることができた。
関連記事:養育費を基準値よりも高く獲得した事例
上記のようなトラブルの際は、ぜひ弊所にご相談ください。女性の初回相談は無料ですので、離婚時の財産分与にお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。
養育費の増額に関するよくある質問
養育費を増額できるタイミングはいつ?
法律上、増額請求のタイミングに制限はありません。「事情の変更」が発生した時点で、いつでも増額を請求できます。
ただし、以下のタイミングが実務上は効果的です。
- 相手の収入が大幅に増加したことを確認できたとき
- 子どもの進学など大きなライフイベントが発生したとき
- 自分の収入が予期せず減少したとき
- 子どもの医療費など特別な支出が発生したとき
重要なのは、増額を請求する明確な理由があるかどうかです。
漠然と「生活が苦しい」というだけでは認められにくいため、具体的な事情の変化を説明できる状態で請求しましょう。
また、増額が認められた場合、通常は「請求した時点から」適用されるため、早めの行動が経済的にも有利です。
子どもが中学生や高校生になったら自動で増額される?
子どもが成長しても養育費は自動的には増額されません。離婚時に取り決めた金額は、双方が合意するか、裁判所の決定がない限り変わりません。
ただし、以下のような取り決めをしている場合は、増額を請求できる可能性があります。
- 離婚時の合意書に「中学進学時に増額する」と明記されている
- 公正証書に段階的な増額条項が記載されている
- 調停調書に年齢に応じた増額が定められている
このような事前の取り決めがない場合は、進学などのタイミングで改めて増額を請求しなければいけません。
なお、養育費算定表では子どもの年齢によって金額が変わる仕組みになっていますが、これも自動適用されるわけではなく、改めて協議や調停を経る必要があります。
子どもが発達障害の場合、養育費を増額できる?
発達障害が離婚後に判明し、療育や特別な支援が必要になった場合は、増額が認められる可能性があります。
発達障害による増額が認められる可能性がある理由は以下の通りです。
- 離婚時には予測できなかった事情である
- 継続的な療育費用や特別支援教育費用が必要
- 親の就労時間が制約を受ける可能性がある
- 子どもの将来にとって必要不可欠な支出である
子どもの発達障害を理由に増額請求を行う際は、以下の資料を準備しましょう。
- 医師の診断書(発達障害の診断名・程度が記載されたもの)
- 療育施設の利用料金の領収書
- 特別支援教育にかかる費用の見積もり
- 今後必要となる継続的な支援内容の説明資料
発達障害の程度や必要な支援内容によって増額幅は変わりますが、客観的な証拠を揃えることで認められる可能性は高まります。
習い事を理由に養育費を増額できる?
習い事を理由とした増額は、原則として認められにくいのが実情です。習い事は「生活に必要不可欠な支出」とは見なされず、親の裁量による選択と判断される可能性が高くなります。
ただし、例外的に増額が認められやすいのは、以下のようなケースです。
- 医師の指示による療育目的の習い事(リハビリ・言語療法など)
- 子どもの特別な才能を伸ばし、プロを目指す合理的な進路であり、かつ相手も認めていた習い事。
- 離婚時の合意で「習い事の費用は別途協議する」と取り決めていた場合
単に「子どもが希望しているから」という理由では増額は難しいでしょう。習い事の費用については、養育費とは別に、都度協議する必要があります。
まとめ|養育費の増額は事情の変更を理由に手続きを進めよう
養育費の増額は、離婚時には予測できなかった「事情の変更」があれば認められる可能性があります。
支払う側の収入増加、子どもの進学や病気による支出増加、受け取る側の収入減少など、客観的な証拠によって事情の変更を証明できれば、家庭裁判所に増額を申し立てることが可能です。
増額を実現するためには、まず相手方との話し合いを試み、合意が得られない場合は家庭裁判所に養育費増額調停を申立てます。
調停では、給与明細や源泉徴収票、医師の診断書、学費の納付書など、事情の変更を証明する具体的な資料を準備することが重要です。養育費算定表を基準としながら、冷静かつ客観的に主張を行うことで、合意に至る可能性が高まります。
ただし、養育費の増額請求は法的な判断が求められる場面も多く、証拠の選定や主張の組み立て方によって結果が大きく変わります。
特に相手方が増額を拒否している場合や、調停が不成立になった場合は、専門家のサポートが不可欠です。
「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」では、養育費問題に精通した弁護士が、一人ひとりの状況に合わせた最適な解決策を提案しています。
増額請求の可能性判断から証拠収集のアドバイス、調停・審判での代理まで、トータルでサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。
離婚・男女問題などでお悩みの方は
ご相談ください
離婚無料相談実施中

- 離婚の話し合いをするに当たって、直近ですべきことがわかるようになります
- 将来の経済的な生活設計(経済面、子どもの養育面など)を視野に入れた上で、
ご相談者様にとって最適の方法をご提案します。 - ご相談者のお話を丁寧に聞き、「心」の満足を得ていただくことができます








