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妊娠中に離婚したらどうなる?子供の戸籍や親権、養育費、公的支援まで弁護士が解説

妊娠中に離婚したらどうなる?子供の戸籍や親権、養育費、公的支援まで弁護士が解説

「妊娠中だが、夫との関係が悪化し離婚を考えている」
「お腹の子どもの親権や戸籍、生活費はどうなるの?」
現在妊娠中の方で、配偶者との離婚に関してこのような悩みや不安を抱えていませんか。
妊娠中の離婚は、通常の離婚手続に加え、生まれてくる子どもの法的地位や母体の健康管理など、配慮すべき特有の課題が多くあります。
この記事では、離婚問題に精通した弁護士が、妊娠中の離婚における法的な取り扱いやリスク、手続の流れを分かりやすく解説します。

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妊娠中に離婚を考える5つの典型的状況

妊娠は本来喜ばしい出来事ですが、心身の変化や将来への不安から夫婦関係が悪化し、離婚に至るケースも見られます。

本章では、妊娠中に離婚を考える典型的な5つのケースを紹介します。

1. 夫の不貞行為(浮気)が発覚した

妊娠中は、つわりや体調の変化、切迫早産による安静指示などにより、性交渉が制限される時期があります。妻が妊娠による大きな身体的負担を抱えている最中に、夫が不貞行為に及ぶケースは残念ながら珍しいことではありません。

このような裏切り行為は、妻に甚大な精神的苦痛を与えるだけでなく、「夫を生理的に受け付けられない」といった決定的な拒絶反応を引き起こす原因となります。

妊娠中の不貞が離婚に直結しやすい背景には、以下の心理的・法的な要因があります。

妊娠中の夫の不貞が離婚につながりやすい理由 詳細
信頼関係の破壊 最も支援が必要な時期に裏切られた事実は、夫婦間の信頼関係の決定的な破壊を招き、回復しがたい
生理的嫌悪感 夫に対し恐怖感や嫌悪感を抱き、関係修復が困難になる
法的正当性 配偶者の不貞は民法上の離婚事由として認められる

一度失墜した信頼の回復は困難であり、出産を待たずに離婚を決断する妻もいます。

2. 夫の「つわり」「体調不良」への無理解・非協力的な態度に直面した

妊娠中の体調変化に対する夫の理解不足によって、夫婦間に深い溝を生じる可能性があります。

つわりで動けない妻に家事労働を強要したり、配慮に欠ける言葉を投げかけたりする夫の言動は、妻にとって結婚生活を継続することへの強い不安につながります。

夫の言動・態度に対して妻が抱く感情・懸念は、以下の通りです。

夫の言動・態度 妻が抱く感情・懸念
「家事が手抜きだ」「甘えている」と責める、妻を家に残して飲み歩く 体調不良を理解してもらえない孤独感
目の前でタバコを吸う 子どもの健康を気遣えないことへの不信感
検診に関心を示さない・付き添わない 「二人の子ども」という当事者意識の欠如に対する不満と不安

こうした夫の言動の積み重ねにより、妻は「出産しても夫婦で協力して子どもを育てられない」と判断し、早期の離婚を検討し始めます。

3. 夫のDV、モラハラ、暴言等がエスカレートした

妊娠を機に、夫の支配的な言動や暴力が激化するケースも散見されます。

特に妊娠中のDVは、母体や胎児への悪影響や流産・早産リスクとの関連が指摘されています。可能な限り早く安全な場所へ避難し、物理的な距離を取ることが重要です。

以下のような兆候が見られる場合は、夫婦関係の修復よりも身の安全を最優先に考えてください。

  • 腹部を狙った暴力や、物を投げつける行為がある
  • 体調不良を無視し、長時間にわたり説教をする
  • 生活費を渡さない、外出を制限するといった経済的・社会的DV

このような状況下では、お腹の赤ちゃんを守るため、離婚や別居を真剣に検討せざるを得ないでしょう。

4. 夫から一方的に離婚を切り出された

妻は夫婦関係の継続を望んでいても、夫から突然理不尽に離婚を求められるケースが存在します。その背景には、夫側の身勝手な動機が含まれていることも少なくありません。

「父親になる自信がない」「自由でいたい」といった責任回避や、実は別の女性と交際している事実を隠している場合もあります。

妊娠中にパートナーを失う不安は大きいものですが、夫の離婚意思が固い場合、修復を目指すよりも有利な条件で離婚するための準備へ切り替えることが賢明な場合もあります。

5. 夫の借金や経済的問題が発覚した

妊娠が分かった後は、出産費用や育児のための費用、将来の教育費の準備など、経済的な基盤を整えることが極めて重要になります。この時期に夫の借金や浪費、ギャンブル依存などが発覚した場合、妻の不安は一層強まるでしょう。

「子どもを経済的に困窮した環境で育てたくない」という意識が働き、生活破綻を避けるために離婚を決意するケースもあります。

特に以下のような金銭トラブルは、子どもの生活を脅かす直接的なリスクになります。

金銭トラブルの例 リスク
消費者金融からの多額の借金 返済により生活費が圧迫される
ギャンブル依存 生活費や出産・育児のための貯蓄を使い込む
無計画な浪費 家計管理ができず、将来の生活設計が立たない

夫に改善の余地がないと判断した場合は、子どもの生活を守るため、離婚が現実的な選択肢となってくることもあるでしょう。

妊娠中に離婚する3つのデメリット・リスク

妊娠中の離婚は、通常のケース以上に心身や経済面で高いリスクを伴うものです。一時の感情で判断を急ぐと、母子の安全や将来の生活基盤を脅かす事態を招きかねません。

本章では、離婚に向けた行動を起こす前に、必ず把握しておくべき3つのデメリットについて解説します。

1. 妊娠中の離婚交渉・手続で心身に大きなストレスがかかる

離婚に際しては、相手との厳しい交渉や弁護士との打ち合わせ、役所等での煩雑な手続など、多大な労力を要します。

特に妊娠中はホルモンバランスの変化により精神状態が不安定になりやすく、通常時よりもストレス負荷が大きくなる傾向にあります。

過度なストレスは母体だけでなく、お腹の赤ちゃんにも以下のような悪影響を及ぼす可能性があると指摘されているため、注意が必要です。

  • ストレスによるお腹の張りや、切迫流産・早産のリスク増大
  • 血圧上昇による妊娠高血圧症候群の発症や悪化
  • 産後うつなどのメンタル不調が長期化するリスク

母子の健康は最優先されるべき事項です。もし体調に不安がある場合は、無理に手続を進めず、無事に出産を終えて心身が落ち着くまで離婚協議を延期することも検討してください。

2. 妊娠中・出産後の収入減少で経済的に苦しくなる

離婚によって夫の収入がなくなると、経済的な基盤が不安定になりがちです。特に妊娠中から出産直後の時期は、女性自身が働いて収入を得ることが物理的に困難であり、経済的に困窮するリスクが高まります。

具体的な時期に応じた経済状況の変化は、以下の表の通りです。

時期 想定される経済的な状況
妊娠中 つわりや体調不良で妊娠前と同様に働くことが困難になり、残業代などが減る
産休・育休中 給与の支給が停止し、出産手当金や育児休業給付金のみとなる
退職した場合 自身の収入が完全にゼロになり、貯蓄を切り崩す生活を強いられる

このように、働けない期間は収入が激減する一方、出産準備や育児用品の購入などで支出は確実に増加します。

養育費も相手の支払能力や支払意思によっては期待通りに受け取れない可能性があるため、離婚後、少なくとも半年~1年分程度の生活費を確保できるか、厳密な資金シミュレーションが欠かせません。

3. 出産後の再就職先や子どもの預け先に悩む

シングルマザーとして自立し生計を立てるには、安定した収入源の確保が必須です。しかし、乳幼児を抱えながらの就職活動は容易ではなく、現実として厳しい状況に直面することになります。

特に「保育園が決まらないと働けないが、職が決まっていないと保育園に入れない」というジレンマに悩むケースは少なくありません。

妊娠中に離婚することによる、就職先や子どもの預け先に関するデメリットは以下のとおりです。

  • 自治体によっては「求職中」の点数が低く、保育園の入園選考で不利になる
  • 子どもが急に発熱した際等の預け先の確保が難しく、採用を見送られやすい
  • 実家の手厚いサポート等がない限り、フルタイム勤務の維持が困難

離婚前に住居や仕事の目処が立っていない場合、出産後に生活が行き詰まる懸念があります。公的支援や実家の協力体制を事前に確認し、確実に生活できる見通しを立てておきましょう。

妊娠中に離婚したら子どもの戸籍と親権はどうなる?

妊娠中の離婚において、特に複雑で誤解が生じやすいのが「子どもの戸籍」と「親権」の取り扱いです。

これらは、離婚が成立した時期と出産日の関係により、法的な身分関係や必要な手続の手順が大きく変わります。

後々のトラブルを防ぐためにも、ケースごとの法的な扱いを正しく理解しておきましょう。

戸籍の扱い|子どもが離婚後300日以内に生まれたかどうか

民法第772条の規定により、離婚から300日以内に生まれた子どもは原則として「元夫の子」と推定されます。よって、出産のタイミングによっては自動的に元夫の戸籍に入ることになる点に注意が必要です。

具体的な出産時期による法的な扱いと戸籍の区分は、以下のように整理されます。

出産のタイミング 法的な推定 子どもの戸籍(原則)
離婚前 夫の子(嫡出子) 夫の戸籍に入る
離婚後300日以内 元夫の子(嫡出子) 元夫の戸籍に入る
離婚後301日以降 嫡出でない子 母親の戸籍に入る

この「300日ルール」による不都合を回避し、実父(元夫以外)や母親の戸籍に入れるためには、出生届に医師作成の「懐胎時期に関する証明書」を添付するなど、法務省が定める所定の手続に従う必要があります。

ただし、令和6年4月1日の民法改正により、離婚後に再婚していれば、離婚後300日以内の出産でも「現在の夫(再婚相手)の子」と推定されるよう制度が変更されました。 (参照:法務省|民法等の一部を改正する法律について

再婚していない場合でも、医師作成の「懐胎時期に関する証明書」を添付すれば元夫を父としない届出が可能になっており、従来のような複雑な手続は解消されつつあります。

親権の扱い|子どもが生まれたときに離婚が成立しているかどうか

親権者の決定は、出生の瞬間に「法的な婚姻関係が継続しているか」が基準となります。

既に離婚が成立している場合、民法819条3項に基づき、母親が単独親権者として扱われます。一方、離婚協議中に出産を迎えた場合は共同親権となり、離婚の際に改めて親権者を定めなければなりません。

離婚成立のタイミング 親権者の扱い
出産時に離婚成立済み 母親が単独親権者になる
出産時に離婚が成立していない(協議中) 父母の共同親権(離婚時に親権者を決定)

親権をめぐる後々の争いを避けやすくするという観点では、出産前に離婚を成立させておく方が有利に働く場合もあります。ただし、個別事情によって判断が左右されうるため、具体的な方針は弁護士と相談しながら検討することが重要です。

なお、令和8年(2026年)4月1日からは民法改正により、離婚後も父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できるようになります。 (参照:法務省|民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について

施行日以降の離婚では、協議により単独親権・共同親権のいずれかを選択できるようになる一方で、DV等の懸念がある場合は裁判所が単独親権を指定する仕組みへと変更される点にご留意ください。

子どもの親権は原則母親が有利?

離婚調停や裁判で親権を争う際、これまで主たる監護者であった親が親権者として指定される可能性が高い傾向にあります。

裁判所は「子の福祉」を最優先の判断基準とし、以下の要素を総合的に考慮します。

  • これまでの監護実績(誰が主に世話をしてきたか)
  • 子どもに対する愛情と養育の意思
  • 現在の監護環境の安定性
  • 子どもの年齢や意思

特に乳幼児期の子どもについては、継続的に日常の監護を行ってきた親(多くの場合は母親)による監護の継続が子の福祉にかなうと判断されることが多いのが実情です。

ただし、母親による虐待や育児放棄、重大な監護能力の欠如といった事情がある場合は、この限りではありません。

生まれてくる子どもとの面会交流はどう決める?

離婚後も法的な親子関係は継続するため、親権を持たない親(元夫)には、子どもと定期的に会う「面会交流権」が認められています。

しかし、生後間もない乳児への負担を考慮し、実施方法や頻度については慎重な検討が欠かせません。乳児期の面会交流において配慮すべき点は以下の通りです。

  • 母親が同席した状態で会う
  • 授乳や排せつ、昼寝等の生活リズムを崩さないよう短時間(1時間程度)にする
  • 写真や動画を送る「間接交流」から段階的に始めることも検討する

最初から長時間の連れ出しを認めるのではなく、赤ちゃんの体調や生活リズムを最優先にしたルール作りを進めてください。

妊娠中の離婚で請求できる3つのお金

離婚に伴う金銭的な請求は、今後の生活基盤を整える上で極めて重要です。ただし、「妊娠中の離婚だから」という理由だけで、別途請求できる金銭が発生するわけではありません。

感情的にならず、通常の離婚と同様に認められる「3つの権利」を正しく理解し、母子の生活を守るための資金を確実に確保しましょう。

1. 養育費(子どもの生活費)

養育費は、子どもが社会的に自立するために必要な費用であり、親である以上は支払う義務を負います。しかし、法的な請求権は「出生後」に発生するため、胎児の期間中に請求することは原則としてできません。

ただし、離婚成立前であれば「婚姻費用」として生活費(検診費用等も含む)を請求でき、出産費用についても財産分与の中で調整することが可能です。

出産前に離婚を成立させる場合は、将来の養育費の支払いに向けた事前の取り決めが不可欠となります。

口約束で済ませるのではなく、以下の項目を離婚協議書や公正証書に明記してください。

  • 支払いの開始時期(例:出生した月から)と支払いの終了時期
  • 月々の支払額、支払日及び支払方法
  • 子どもの進学時、病気になった場合などに必要となる費用(特別出費)の負担
  • 出産時にかかる分娩費用や入院費の負担

出産後に改めて協議を行う負担を避けるためにも、離婚時に「生まれた後の条件」まで合意しておくことが賢明と言えます。強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、未払い時に裁判を経ることなく、速やかに給与差し押さえなどの強制執行に移行することが可能になります。

関連記事:離婚後の養育費の相場はいくら?年収別・子どもの人数別に徹底解説

2. 慰謝料(精神的苦痛への対価)

慰謝料とは、離婚の原因を作った有責配偶者に対して請求する、精神的苦痛への損害賠償金を指します。

単なる性格の不一致や価値観の相違では認められず、相手に不貞や暴力といった、婚姻関係を破綻させる原因となった明らかな違法行為がある場合にのみ請求可能です。

具体的な請求の可否については、以下の表を参考に判断してください。

請求できる可能性が高いケースの例 請求が難しいケースの例
・不貞行為(浮気・不倫)
・身体的暴力(DV)
・性格・価値観の不一致
・親族との折り合いが悪い
・信仰上の対立

特に妊娠中の不貞行為や暴力は、極めて悪質な行為とみなされます。

裁判においても慰謝料の増額事由として考慮される可能性が高いため、診断書やメール、メッセージの履歴など、被害を証明できる証拠は確実に保全しておきましょう。

3. 財産分与(婚姻中に築いた夫婦の共有財産の清算)

財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を公平に清算する制度です。

夫婦が協力して築いた財産であれば、名義の如何にかかわらず、預貯金や不動産などあらゆる財産が夫婦共有財産とみなされ、原則として夫、妻それぞれが2分の1ずつ取得することになります。

専業主婦であっても「内助の功」としての貢献が認められるため、遠慮する必要はありません。主な分与対象は以下の通りです。

  • 現金および預貯金
  • 株式等の有価証券、投資信託
  • 生命保険や学資保険の解約返戻金
  • 不動産
  • 将来受け取る予定の退職金、確定拠出年金等

なお、出産にかかる分娩費用や入院費についても、財産分与の協議内で負担割合を調整するのが一般的です。

離婚後の生活資金を確保するためにも、相手に隠し財産がないか入念に調査した上で交渉に臨んでください。

関連記事:離婚時の財産分与とは?対象になるもの・ならないものや有利に進めるコツを弁護士が解説

妊娠中の離婚手続の進め方【5ステップ】

体調が不安定な妊娠中に、離婚に伴うあらゆる複雑な手続を進めるのは容易ではありません。そのため、全体の流れを俯瞰し、いつ・何をすべきか優先順位をつけておくことが重要です。

ここでは、離婚に向けた協議から出産後の諸手続まで、やるべきことを5つのステップで解説します。

ステップ1:離婚条件の話し合い(協議)を進める

まずは夫婦間で、離婚に向けた協議を行います。

ホルモンバランスの影響で感情が高ぶりやすい時期ですが、子どもの将来を守るため、以下の条件について冷静に取り決めなければなりません。

  • 親権者の指定(離婚成立が出産後の場合)
  • 養育費の金額、支払開始時期、支払期間、支払方法
  • 慰謝料や財産分与の有無と金額
  • 面会交流の頻度や方法

この段階での口約束は、後々のトラブルの原因となります。

合意に至った内容はメモに残すだけでなく、ボイスレコーダーで録音するなど、客観的な証拠として保存しておきましょう。

ステップ2:話し合いがまとまらない場合は「離婚調停」を申し立てる

当事者同士での話し合いが難航する場合は、家庭裁判所へ「離婚調停」を申し立てることになります。

調停委員という中立的な第三者が介在することで、感情的な対立を緩和し、建設的な議論が期待できるでしょう。

つわりや切迫早産の恐れがあるなど、裁判所への出頭が身体的に辛い場合は、ウェブ会議や電話会議のシステムを利用して手続に参加できる制度があります。

無理をして母体に負担をかけないよう、事前に弁護士や裁判所に事情を伝え、柔軟な対応を相談してみてください。

ステップ3:合意内容を書面化する(公正証書・調停調書)

話し合いで合意した内容は、法的効力を持つ公的な書面に残しましょう。。

協議離婚の場合は「離婚協議書」を作成して公証役場で「公正証書」にし、調停離婚の場合は裁判所で「調停調書」が作成されます。

特に養育費については、公正証書に「強制執行認諾文言」を記載しておくことが不可欠です。

この文言により、万が一相手からの支払いが滞った際に、裁判を起こさずとも直ちに給与や預金を差し押さえること(強制執行)が可能になります。

ステップ4:「離婚届」を提出する

諸条件が整い次第、市区町村役場へ「離婚届」を提出してください。

妊娠中であっても受理されれば婚姻関係は解消され、生まれてくる子どもと新しい人生のスタートを切ることになります。

ただし、離婚届の提出はあくまで夫婦関係の終了を意味するものであり、お腹の子どもに関する法的手続まで完了したわけではありません。

出産後には、出生届や戸籍の移動など、期限のある重要な手続が控えています。。「離婚届を出して終わり」ではなく、次のステップへ向けた準備も確実に進めていきましょう。

ステップ5:【出産後】子どもの戸籍・健康保険・公的支援の手続を進める

出産後は、子どもの戸籍や生活に関する行政手続を遅滞なく進める必要があります。特に父である夫(又は元夫)の戸籍に入った子どもを離婚後の母親の戸籍に入れるには、家庭裁判所での手続が欠かせません。

必要な手続きと概要は以下の表の通りです。

手続き 期限・タイミング 概要
出生届 生後14日以内 医師の出生証明書と共に役所へ提出する
子の氏の変更許可申立 出生届提出後 子どもの名字を母親と同じにするため、家裁の許可を得る
入籍届 家裁の許可後 許可審判書を添えて役所に届け出、子を母親の戸籍に入れる
健康保険・手当申請 速やかに行う 母親の扶養に入れ、児童手当・児童扶養手当を申請する

表内の「子の氏の変更許可申立」を行わないと、子どもの名字は元夫のままとなり、母親の戸籍に入ることができません。。なお、「子の氏の変更許可申立」は、母親が離婚後も婚姻中の氏(元夫と同じ氏)を名乗り続ける場合も必要です。

離婚後300日以内に生まれた場合など、法的な判断が難しいケースも含め、手続に漏れがないよう計画的に進めてください。

妊娠中の離婚で後悔しないための3つのポイント

一時の感情に任せて離婚届を提出してしまい、出産後に「生活が立ち行かない」と後悔するケースは少なくありません。

生まれてくる子どもとともに安定した再スタートを切るためには、冷静に現実を見つめ、確実に準備を整えることが不可欠です。

本章では、最終的な決断を下す前に、必ず確認しておきたい3つの重要ポイントを解説します。

妊娠中の体調を最優先に考える

何よりも優先すべき事項は、母体の健康を守り、無事に出産することです。

離婚協議における激しい口論や精神的な緊張状態は、体調悪化を招きかねません。

もし相手との話し合いが過度なストレスとなっているなら、無理に結論を急がず、一旦手続きを中断する判断も必要です。

母子を守るための具体的な方法として、以下の選択肢を検討してください。

  • まずは別居し、物理的な距離を取って心身を休める
  • 弁護士を代理人に立て、夫との直接的な接触や連絡を断つ
  • 離婚条件の話し合いは出産後、体調が回復してから再開する

今のあなたにとって最も大切な役割は、急いで離婚を成立させることではなく、お腹の命を守り抜くことにあります。「今は戦わない」という選択も、将来を見据えた賢明な戦略と言えるでしょう。

離婚後の収支をシミュレーションし生活設計を立てておく

離婚後の生活を安定させるには、感情論ではなく「数字」に基づいた冷静な試算が求められます。

特に乳幼児を抱えての生活は、おむつ代やミルク代などの出費がかさむ一方、フルタイムでの就労が難しく、収入が不安定になるリスクが高いのが現実です。

漠然とした経済的不安を解消するため、以下の項目を具体的に書き出し、毎月の収支をシミュレーションしてみましょう。

項目 確認すべき内容・計算のポイント
収入の見込み 児童扶養手当、児童手当、養育費、実家からの援助、貯蓄からの引出額
支出の予測 家賃、水道光熱費、食費、育児用品代、被服費、医療費、通信費、保険料等
住居の確保 実家に戻れるか、支払うことが可能な家賃の額、家賃の安い公営住宅等に入居できるか

具体的な数字を可視化することで、「あと月5万円足りないから、実家に相談しよう」といった現実的な対策を講じることが可能になります。

生活設計が破綻しないよう、収入は少なめに、支出は多めに見積もっておくのが安全策です。

公的支援制度を最大限活用する

日本には、ひとり親家庭(シングルマザー)の生活を支えるための公的支援制度が数多く整備されています。これらの制度を正しく理解し、積極的に利用することで、経済的な負担を大幅に軽減できるはずです。

主な支援制度の概要と目的は以下の通りです。

制度名 概要・目的
児童扶養手当 ひとり親世帯の所得に応じて支給される生活支援の手当
児童手当 高校生までの子どもがいる全世帯に支給される手当
医療費助成制度 親子の医療費自己負担分を軽減、または無料化する制度
住宅手当 民間アパートなどの家賃の一部を自治体が補助する制度

注意点として、これらの支援は「申請主義」が原則であり、自ら申請しなければ受給できません。

また、住宅手当などは自治体によって有無や条件が大きく異なります。お住まいの地域の役所窓口やホームページで最新情報を確認し、妊娠中の段階から必要書類等の準備を進めておきましょう。

妊娠中の離婚に関するよくある質問

妊娠中に離婚したら胎児の養育費はもらえますか?

原則として、胎児の段階で「養育費」を請求することはできません。法的に養育費の支払い義務が発生するのは、子どもが出生してからとなります。 しかし、妊娠中の生活費や出産にかかる費用を夫に一切請求できないわけではありません。

離婚成立前であれば、以下の名目で金銭的な分担を求めることが可能です。

請求可能な金銭 詳細
婚姻費用 別居中の生活費(検診費用なども含む)として請求する
財産分与 分娩費用や入院費を夫婦の共有財産から清算する形で考慮させる

「養育費」という名目にこだわらず、実質的な負担を軽減するための権利を行使しましょう。

妊娠中に離婚したら子どもの名字はどうなりますか?

離婚後300日以内に出生した場合、子どもは元夫の戸籍に入り、名字も「元夫の氏」を名乗ることになります。 たとえ母親が離婚届を提出して旧姓に戻っていたとしても、子どもの名字は自動的には変わりません。

子どもを母親と同じ名字・戸籍にするためには、以下の法的な手続を経て変更する必要があります。

  • 家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる
  • 裁判所の許可(審判)を得る
  • 市区町村役場に入籍届を提出し、子を母親の戸籍に移す

これらの手続を行わない限り、親子で名字が異なる状態が続く点にご注意ください。

妊娠中の離婚で中絶をしたら慰謝料は請求できますか?

原則として、中絶を理由とした慰謝料請求は認められにくい傾向にあります。中絶は母体保護法に基づき、夫婦の合意のもとで行われる適法な処置とみなされるためです。 ただし、夫側に中絶に至らしめた強い有責性がある場合は、例外的に請求が認められるケースが存在します。

具体的には、以下のような事情がある場合に不法行為として損害賠償が検討されます。

  • 夫からのDVにより流産、または中絶せざるを得なくなった
  • 避妊に協力せず、妊娠判明後に中絶を強要した
  • 夫の不貞行為により婚姻関係が破綻し、経済的困窮からやむなく中絶を選択した

個別の事情によって判断が大きく分かれるため、泣き寝入りせずに弁護士へ相談することを推奨します。

まとめ|妊娠中の離婚はリスクも含めて慎重に判断しよう

妊娠中の離婚は、ご自身の体調だけでなく、生まれてくる子どもの戸籍や親権、そして将来の経済的な基盤など、考慮すべき事項が非常に多岐にわたります。

「一刻も早く夫との縁を切りたい」と焦るあまり、不利な離婚条件で合意してしまったり、複雑な戸籍の手続を見落としたりすると、結果として産後の生活が立ち行かなくなるリスクも否定できません。

「今の状況で離婚を進めてよいのか判断がつかない」「相手との交渉がストレスでお腹の赤ちゃんに影響が出そう」といった状況では、決して一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で離婚問題に精通した弁護士への相談がおすすめです。

妊娠中・出産前後の離婚問題にお悩みの方は、離婚問題に強い丸の内ソレイユ法律事務所にご相談ください。女性の初回相談は無料となっておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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