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父親が親権を取ることは可能?勝ち取れるケースを解説【弁護士監修】

父親が親権を取ることは可能?勝ち取れるケースを解説【弁護士監修】

「離婚に際し、子どもの親権だけは絶対に妻(子どもの母親)に譲りたくない」
「親権は母親が圧倒的に有利だと聞くけれど、父親が取れるケースはないのだろうか?」
離婚時の親権において、このように父親であることの不利を感じて悩んでいませんか。

この記事では、父親が親権争いで不利になりやすい理由や裁判所が重視する判断基準、そして父親が親権を勝ち取れる具体的なケースについて詳しく解説します。

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父親が親権を取るのは難しい?

離婚する夫婦に未成年の子どもがいる場合、必ずどちらか一方を親権者と定めなければなりません。日本では「親権=母親」というイメージをお持ちの方もいるかと思います。

本章では、父親が親権を取れるケースや不利になりやすいといわれる理由について解説します。

父親が親権者になれる割合は約1割

厚生労働省の統計によれば、親権を行う子がいる離婚(111,335件)のうち、離婚後に父親が親権者となる割合は、全体の約11%(13,126件)です。

一方、子どもの母親(妻)が親権を持つケースは約85%(94,291件)となっています。

項目 件数
親権を行う子がいる離婚 111,335件
【内訳】子どもの母親(妻)が全児の親権を持つ離婚 94,291件
【内訳】子どもの父親(夫)が全児の親権を行う離婚 13,126件
【内訳】子どもの両親(夫妻)が分け合って親権を行う離婚 3,918件

参照:厚生労働省|令和4年度 離婚に関する統計の概況

よって、統計上は親権を行う子がいる離婚のうち、母親が親権を取るケースが圧倒的に多く、父親が親権を取れるケースが決して多くないといえるでしょう。

また、この割合は協議離婚を含む届出上の親権指定結果であり、親権を裁判で争ったケースの勝敗割合ではありません。

親権争いで父親が不利になりやすい理由

なぜ、父親が親権争いで不利になりやすいのでしょうか。これには、裁判所が親権者を決める際の判断基準が大きく関係しています。

父親が不利になりやすい理由(裁判所の判断基準) 具体的な内容
監護実績の差 母親が主たる養育者として育児を担ってきた実績が多い
母性優先の原則(乳幼児) 子どもが乳幼児の場合、母親による養育が優先されやすい

裁判所では、子どもの生活環境が急変することによる精神的負担を最小限にすべきだと考えるため、「これまでの養育実績(監護の継続性)」が最も重要視されます。

日本の多くの家庭では、父親が長時間労働を担い、母親が主に育児・家事を担ってきたケースが少なくありません。これまでの養育実績を客観的に評価すると、母親が有利になりやすいでしょう。

また、子どもが乳幼児の場合には「母性優先の原則」が考慮される傾向にあります。

心身が未発達な乳幼児期は、授乳を含め、母親によるきめ細やかな世話が子の福祉に適うと判断されやすいのです。

ただし、これらはあくまで傾向に過ぎず、法的に「母性」が「父性」より優れていると定められているわけではありません。

父親が育児に積極的に関わってきた事実や、母親側に養育者として不適格な事情があれば、父親が親権者となる可能性は十分にあります。

親権を父親が取るには何が必要?裁判所が重視する5つの判断基準

協議で親権者が決まらない場合、最終的には家庭裁判所での調停や審判で決めることになります。

裁判所が親権者を判断する唯一の基準は、「子の利益(子どもの幸福)」です。具体的には、以下の5つの基準を総合的に考慮します。

判断基準 重視されるポイント
監護の継続性 これまで主にどちらが子どもの世話をしてきたか
母親優先の原則 子どもが乳幼児の場合、母親との結びつき
子どもの意思 子ども自身がどちらと暮らしたいか(子の年齢による)
兄弟姉妹不分離 兄弟姉妹は原則として分離させない
親の心身の健康と経済力 子育てができる健康状態と、養育環境を整える経済基盤

監護の継続性(これまでの養育実績)

「監護の継続性」は、裁判所が親権者を判断する上で最も重視する基準です。これは、子どもの生活環境を急に変えるべきではない、という考えに基づきます。

転校や友人関係、生活リズムの激変は、子どもに多大な精神的負担を与えると解釈されます。

裁判所は「これまで主に育児を担ってきた親が、引き続き養育することが子の利益にかなう」と判断する傾向が強いです。

具体的には、以下のような養育実績が総合的に考慮されます。

  • 食事、入浴、寝かしつけなどの日常の世話
  • 保育園や学校の送迎、連絡帳の確認
  • 学校行事(授業参観、運動会など)への参加
  • 病気や怪我の際の通院の付き添い
  • 習い事のサポートや宿題の確認

離婚前から別居している場合は、特に注意が必要です。子どもが現在の生活環境に慣れ、安定していると判断されれば、その現状が強く尊重されます。

母親優先の原則(乳幼児の場合)

子どもが乳幼児(特に0〜3歳頃)の場合、裁判所では「母親優先の原則」が考慮されやすい傾向にあります。

「母性」を絶対視する法律があるわけではありませんが、心身が未発達な乳幼児期は、母親によるきめ細やかな世話が子の健全な発育に不可欠と判断されやすいためです。

ただし、これは絶対的な基準ではありません。近年の価値観の変化や育児環境の多様化に伴い、この原則の重要度は相対的に低下している傾向です。

例えば、以下のような場合は父親が親権者となる可能性も十分あるでしょう。

  • 父親が主夫として育児を担ってきた実績がある
  • 母親の健康状態(精神疾患を含む)により養育が困難
  • 母親が育児放棄や虐待を行っている

子どもの意思の尊重(15歳以上は聴取が必須)

子どもの年齢が上がるにつれて、その意思は親権者判断の重要な要素です。

裁判所でも、子の年齢や発達段階に応じて、その意向を慎重に把握し、尊重すべきとされています。この考え方は、家事事件手続法の第65条でも定められているものです。

第六十五条 家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。

引用:家事事件手続法|第65条

具体的な子どもの年齢ごとの裁判所の対応は以下の通りです。

年齢区分 裁判所の対応
15歳以上 家事事件手続法169条2項により、子の意見を聴取することが義務付けられています。特段の事情がない限り、本人の意思が尊重されます。
概ね10歳〜14歳頃 家庭裁判所調査官が面談を行います。子どもの本心や真意を慎重に確認し、報告書を作成します。
概ね10歳未満 家庭裁判所調査官が面談を行うことも多いですが、本人の意思表明が重視されることは少ないです。これまでの養育環境や客観的な状況が優先されます。

ただし、裁判所は子どもから聴取した内容を鵜呑みにするわけではありません。

親による不当な誘導や「忖度」がないかを慎重に判断し、子どもの真意に基づく希望であると認められた場合、その意思は考慮されます。

兄弟姉妹不分離の原則

子どもに兄弟姉妹がいる場合、原則として分離すべきではないと考えられています。これが「兄弟姉妹不分離の原則」です。

兄弟姉妹が共に生活することは、遊び相手や相談相手として、お互いが心の支えとなります。

裁判所では、この関係性が、子どもの精神的な安定や人格形成に重要と解釈されているため、親権者を判断する際の重視する基準の1つとしています。

よって親権争いにおいては、兄弟全員を引き取れる養育環境を提示できる親が有利になる傾向があるのです。

ただし、この原則が絶対ではありません。以下のようなケースでは、例外として兄弟姉妹の分離が認められることもあります。

  • 子どもたちが別々の親と暮らすことを明確に希望している(特に年齢が高い場合)
  • 別居期間が長く、既に別々の環境で安定した生活を送っている

親の心身の健康状態と経済力

裁判所が親権者を判断する際は「親自身が、子育てを安定して行える心身の健康状態にあるか」が考慮されます。

具体的には、以下の要素を総合的に見て判断します。

  • 安定した収入源の有無
  • 離婚後の住環境の確保
  • 相手方から受け取る養育費
  • 児童扶養手当などの公的扶助の活用

親に病気や障害があること自体が、即座に不利になるわけではありません。あくまでも重要なのは、その状態が子どもの養育に具体的な支障を及ぼすかどうかです。

具体的には、以下のような点が問われます。

  • 入退院を繰り返しており、日常の世話が困難になっていないか
  • 精神疾患により、子どもへの配慮が難しい状態ではないか
  • 養育への意欲が十分にあるか

経済力についても、単純な収入額の多さで優劣が決まるものではありません。高収入である必要はなく、非親権者から支払われる養育費も含め、子どもを育てる最低限の経済基盤があるかが判断基準です。

父親が親権を取れる可能性がある7つのケース

裁判所は「子の利益」を最優先するため、母親側に養育者としての適格性を欠く事情があれば、父親が親権者となる可能性は十分にあります。

これまでの養育実績で不利になりがちな父親も、以下のようなケースでは親権者として認められる可能性が高まるでしょう。

ケース1. 妻(母親)が育児放棄(ネグレクト)をしている

母親が子どもの養育を怠る「育児放棄(ネグレクト)」の事実がある場合、父親が親権を取れる可能性があります。

ネグレクトは、子どもの心身の健全な発達を著しく阻害する行為です。具体的なネグレクトの例は以下の通りです。

  • 食事を十分に与えない、栄養バランスが極端に偏っている
  • 長期間入浴させず、不衛生な状態にしている
  • 病気や怪我をしても病院に連れて行かない
  • 年齢不相応に子どもだけで留守番させる時間が長い

母親にネグレクトの行為が認められる場合、母親による養育は「子の利益」に反すると強く判断されるため、父親が親権を取れる可能性が高まるでしょう。

母親のネグレクトの事実を証明するには、写真、日記、医師の診断書など客観的な証拠が重要です。

ケース2. 妻から子どもへの虐待・DVがある

母親が子どもに対して、身体的または精神的な虐待を行っている場合も、父親が親権を取れる可能性があります。

虐待やDVも、育児放棄(ネグレクト)と同様、「子の利益」を根本から害する深刻な事態であるためです。子どもの安全と福祉を守るために、父親が親権者として指定される強い理由となります。

考慮される虐待やDVの例には以下のようなものがあります。

  • 身体的虐待:殴る、蹴る、物を投げつける
  • 精神的虐待:暴言を浴びせる、無視する、脅迫する
  • 面前DV:父親(夫)へのDVを子どもが見ている状況を作る

ケース3. 妻の精神疾患や健康状態に問題がある

父親が親権を取れるケースとして、母親がうつ病、統合失調症、各種依存症(アルコール、薬物など)といった精神疾患を患っている場合があげられます。

ただし、母親が病気であること自体が直ちに親権者として不適格となるわけではありません。重要なのは、その病気や状態によって、子どもの養育に具体的な支障が出ているかどうかです。

実際に、母親(妻)が軽度の精神的な病気を抱えており、裁判の結果、父親(夫)が親権を獲得した事例もあります。

裁判所が重視する「具体的な支障」の例は以下の通りです。

  • 入退院を繰り返しており、安定した養育が期待できない
  • 症状により感情の起伏が激しく、子どもに危害を加える恐れがある
  • 服薬管理ができず、日常生活に支障が出ている

治療によって症状が安定しており、周囲のサポート(親族など)を受けながら養育できる場合は、不利にならないこともあります。

ケース4. 妻が子どもを置いて家を出ていった

母親が不倫相手のもとへ行くなど、自らの意思で子どもを置いて家を出ていった(監護を放棄した)場合は、父親に親権が認められることがあります。

このケースでは、別居後に父親が一人で子どもを育てている事実が生まれ、裁判所が重視する「監護の継続性」の観点で、父親の実績が強く考慮されることになるでしょう。

母親が自ら監護を放棄したという事実は、養育への意欲が低いと判断され、結果として父親が親権を取るケースもあります。

ケース5. 子ども自身が「父親と暮らしたい」と強く希望している

子どもが一定の年齢に達しており、明確な意思で「父親と暮らしたい」と希望している場合、父親が親権者となる可能性があります。

裁判所は「子どもの意思の尊重」を重視しており、子どもの意思が、父親と子の間の良好な関係性を客観的に示す証拠とみなされるためです。

母親が主たる監護者であった場合でも、一定の年齢以上の子どもが父親と暮らすことを本心で強く望んでいることが認められれば、父親が親権を取れる可能性もあるでしょう。

ケース6. 父親がこれまで主夫として育児を担ってきた

共働き家庭で父親が時短勤務を選択したり、父親が主夫として家事・育児全般を担ってきた実績があったりする場合、父親が親権を取れるケースがあります。

これは、裁判所が最重要視する「監護の継続性(これまでの養育実績)」において、父親が有利になるパターンです。

父親が主夫として育児を担ってきたことを主張する際は、以下のような「主たる監護者が父親であった事実」を具体的に主張します。

  • 日々の食事の準備、片付け
  • 保育園や学校の送迎
  • 授業参観や保護者会への参加
  • 子どもの通院の付き添い

母親が仕事で多忙を極め、育児への関与が少なかった場合、父親が親権者としてふさわしいと判断されやすくなるでしょう。

ケース7. 妻の不貞行為が子の養育環境に悪影響を及ぼしている

前提として、妻(母親)の不貞行為(不倫)が離婚原因であることと、親権の判断は原則として別問題です。有責配偶者(ゆうせきはいぐうしゃ)であるからといって、親権者になれないわけではありません。

しかし、その不貞行為によって、子の養育環境が具体的に悪化している場合は、母親の養育者としての適格性が疑われ、父親が有利になる可能性があります。

「養育環境への悪影響」とは、以下のような状況を指します。

  • 不倫相手を頻繁に自宅に連れ込み、子どもを不安にさせる
  • 子どもを放置して外泊を繰り返す
  • 子どもの前で不倫相手と不適切な行為に及ぶ
  • 育児よりも不倫相手との関係を優先し、子の世話を怠る

あくまで「子の利益」の観点から、子どもの精神的安定が脅かされていないかが、親権者判断のポイントとなるのです。

父親が親権を取れない可能性が高い4つのケース

ここまでは父親が親権を取れる可能性があるケースを解説しましたが、逆に以下のようなケースでは、父親が親権を獲得するのは難しくなります。

裁判所は「子の利益」を害するリスクを最大限に避けるため、父親側に懸念材料がある場合、親権者として認めることに極めて慎重になります。

1. 別居後の監護実績が母親に大きく劣っている

離婚前に別居し、母親が子どもを引き取って安定した生活を送っている場合、父親が親権を取るのは難しい可能性があります。

この場合、裁判所が最重要視する「監護の継続性」の観点から、母親が圧倒的に有利になるためです。

特に下記のような状況は、「監護の継続性」が父親側に不利にはたらく傾向にあります。

  • 子どもが母親との現在の生活に精神的に安定している
  • 既に転校・転園し、新しい環境に馴染んでいる
  • 母親による養育が問題なく行われている(現状維持が優先される)

このようなケースでは、父親が親権者になることで、子どもに再び大きな精神的負担を強いることになります。

子の利益の観点から、その変化は望ましくないと判断され、母親が親権者になる可能性が非常に高くなるでしょう。

2. 母親側に虐待やネグレクト等の不利になる事由がない

母親が養育者として熱心に育児を行っており、健康面や精神面にも特に問題がない場合も、父親が親権を取れない可能性があります。

親権争いは「より良い親」を決めるものではなく、あくまで「子の利益」の観点から、どちらが養育者としてふさわしいかを判断するものです。

母親が養育者として適格であり、子どもとの関係も良好な場合、裁判所が「あえて親権者を父親に変更する積極的な理由がない」と考えます。

また、この状況で親権者を変更することは、「子の利益」にかなわないと判断されやすいため、父親が親権を取るのは難しいでしょう。

3. 父親自身にDV・モラハラ・不貞行為などの有責性がある

父親自身に「有責性(離婚の原因を作った責任)」がある場合、養育者としての適格性を厳しく問われ、親権者としては認められない可能性が高いでしょう。

有責行為の例 親権判断への影響
DV・モラハラ 子どもの安全な生活環境を脅かす行為であり、養育者として根本的に不適格と判断される可能性が極めて高い
不貞行為 子どもの養育を顧みない(例:不倫相手を家に連れ込む、外泊を繰り返す)など、子の福祉を害する行動が伴うと著しく不利になる
ギャンブル・浪費 子どもの生活基盤となる経済的安定性を欠くと判断され、不利になる可能性がある

特にDV(家庭内暴力)やモラハラ(精神的虐待)は、子どもの心身に深刻な悪影響を与える行為です。

たとえ子どもへの直接的な暴力でなくとも、母親へのDVを子どもが見聞きする「面前DV」は、児童虐待の一種と認定されます。

不貞行為(不倫)自体が親権と直結するわけではありませんが、不貞行為を優先して育児を疎かにしたなどの事情があれば、養育者として不適格と判断される強い要因となります。

4. 離婚後の養育プラン(協力者・時間・住環境)を具体的に示せない

父親が親権を希望しても、離婚後の具体的な養育プランを提示できないと不利になります。

親権は「愛情がある」という感情論だけでは認められず、子どもの生活を支えていくための客観的で具体的な計画が不可欠です。

裁判所は、父親が提示する養育プランが現実的か、継続可能かを厳しく審査します。具体的には以下の要素を重視します。

裁判所が審査する養育プランの内容 詳細
監護の補助者 日中や残業時、誰が子どもの世話をするのか。※両親や(子どもの祖父母)に頼る場合、その年齢や健康状態、同意の有無も問われる。
養育の時間 父親自身の勤務形態(時短、在宅、転勤の有無)は、子育てと両立できるものか。
住環境 子どもが安全に暮らせるか。学校からの距離、子どものプライバシー(個室など)が確保されているか。
経済的基盤 現在の収入で、子どもの生活費や教育費を安定的に賄えるか。

これらが曖昧だと、裁判所に「子の利益」を任せられないと判断され、親権者として認められない可能性が高いでしょう。

父親が親権を取るため必要な準備・手順

父親が親権獲得を目指す場合、感情論ではなく、客観的な証拠と具体的な計画に基づいた、戦略的な準備が不可欠です。

裁判所に「子の利益」を任せられると判断してもらうため、以下のステップを着実に進めましょう。

ステップ1. 監護実績を積み上げ、客観的な証拠として記録する

「自分がいかに育児をしてきたか」を客観的に証明する準備が最も重要です。これは、裁判所が最重要視する「監護の継続性」に対する直接的な証拠となるためです。

「愛情がある」という主張だけでは不十分であり、「実際に行動してきた事実」を示す必要があります。

証拠の例 記録のポイント
育児日記

食事、入浴、寝かしつけ、遊びの内容と時間を詳細に記録する。

体調変化などもあわせて記載する。

連絡帳や手紙 保育園や学校の連絡帳で、父親が返信やコメントを書いている箇所のコピー。子どもからの手紙や絵など。
通院記録

病院の領収書(宛名)、お薬手帳、診察券。

父親が付き添った事実がわかるメモも残す。

学校行事の記録 授業参観、運動会、保護者会に参加した際の資料や写真(日付がわかるもの)。
写真・動画

日常的に子どもと触れ合っている様子(公園、食事、宿題など)。

※データの日付が証拠になる。

証拠は、単発のものではなく、日常的かつ継続的に記録されているほど強力です。具体的には、以下のような証拠を集めましょう。

ステップ2. 子どものための養育環境を具体的に整備する

離婚後に子どもとどのような生活を送るのか、具体的な計画(養育プラン)を立てます。親権獲得後の生活が「現実的」であり、「継続可能」であることを裁判所に示すためです。

整備すべき環境 具体的な計画のポイント
住環境 子どもが安全に暮らせる住居の確保。現在の学校や保育園に通い続けられるか(校区)。子どもの年齢に応じた広さや部屋数。
協力者(監護補助者) 自分の両親(祖父母)や兄弟姉妹のサポート体制。その人物の健康状態、年齢、同意の有無(書面が望ましい)。ベビーシッターや学童保育の利用計画。
就労(養育時間) 育児と両立できる勤務形態への変更。時短勤務、在宅ワーク、残業や転勤の有無について、会社の理解や制度利用を明示します。
経済的基盤 現在の収入で、子どもの生活費や教育費を安定的に賄えるか。家計のシミュレーション。

父親が親権者となった場合の、子どもの生活の安定性を具体的に提示する必要があります。

ステップ3. 親権問題に強い弁護士へ相談し、法的な戦略を立てる

別居前から弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。

  • 集めるべき有効な証拠について、具体的なアドバイスを受けられる
  • 別居時の適切な対応(一方的な子どもの連れ去りとみなされない方法など)を学べる
  • 相手(母親)側の主張を予測し、法的な反論を準備できる

弁護士と共に、客観的証拠に基づいた法的な戦略を立てることが、親権獲得の鍵となるでしょう。

父親の親権獲得に悩んでいる方は、丸の内ソレイユ法律事務所にご相談ください。当事務所には親権問題の解決実績のある弁護士が在籍しており、状況に応じて適切なアドバイスを行います。

電話受付時間 9:00〜20:00 土日祝休

ステップ4. まずは協議による親権者の合意を目指す

離婚において、まずは夫婦間の話し合い(協議)で親権者を決めるのが原則です。

調停や裁判に移行すると、解決まで長期化する傾向があります。長期の紛争は、子どもにとって最も大きな精神的負担となるため、できる限り協議での解決を目指します。

交渉の場では決して感情的にならず、準備した客観的な資料を提示し、「いかに自分が親権者としてふさわしいか」を、子の利益の観点から冷静に説明することが重要です。

もし協議で合意できた場合は、必ず親権者を明記した「離婚協議書」を作成します。法的な拘束力を高めるためにも、離婚協議書は「公正証書」にして残しておきましょう。

ステップ5. 協議でまとまらなければ家庭裁判所での調停・審判に進む

協議で合意できない場合は、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てます。

調停は、裁判官や調停委員という中立な第三者を介して、話し合いで解決を目指す手続きです。協議の段階で準備した証拠や養育プランは、調停委員を説得する強力な材料となります。

調停でも合意に至らない(不成立)場合は、自動的に「審判」または「離婚訴訟(裁判)」に移行する流れです。

最終的には、裁判官がすべての事情を考慮し、「子の利益」の観点で親権者を指定する判断を下すことになります。その際、家庭裁判所調査官による家庭訪問や親子面談などの調査結果も、重要な判断材料とされます。

父親が親権を取れなかった場合の2つの選択肢

万が一、親権が取れなかった場合でも、子どもとの関わりを維持する方法は残されています。

親権者になれなくとも、父親であることに変わりはありません。

子どもの成長を見守り、関わり続けるための法的な選択肢を知っておきましょう。

1. 定期的な「面会交流」を確実に実施する

親権者になれなくても、親として子どもと交流する「面会交流」の権利が法的に認められています。

面会交流は、子どもの健全な成長(子の利益)の観点からも非常に重要とされています。離婚時に、面会交流の具体的なルールを明確に取り決めておくことが極めて重要です。

口約束ではなく、離婚協議書や公正証書などの書面に残してください。

【面会交流で取り決めるべき主な項目】

  • 頻度:「月1回」「2週間に1回 」など
  • 時間:「毎月第2土曜日の10時から17時まで」など
  • 場所:「父親の自宅」「商業施設」「公園」 など
  • 宿泊:宿泊を伴う面会(お泊り)の可否
  • 連絡方法:面会の日程調整や子どもの近況報告の方法(電話、LINEなど)
  • 学校行事:運動会や授業参観への参加の可否

もし取り決めが守られない場合は、家庭裁判所に「面会交流調停」を申し立て、ルールの実現を求めることができます。

2. 親権者変更の申立てを視野に入れる

一度決まった親権は、絶対的なものではありません。

離婚後に親権者である母親の状況が大きく変化し、子の利益が著しく害されるケースでは、親権者の変更を家庭裁判所に申し立てることが可能です。

ただし、変更のハードルは非常に高いのが現実です。裁判所は子どもの生活環境の安定を重視するため、「親権者を変更すべき特段の事情」が求められます。

【親権者変更が認められる可能性がある「特段の事情」の例】

  • 親権者(母親)による子どもへの虐待や育児放棄(ネグレクト)
  • 親権者が重い病気や精神疾患を患い、養育が困難になった
  • 親権者の死亡
  • 親権者の再婚相手が子どもを虐待している
  • 子ども自身が父親との生活を強く希望している

手続きとしては、まず「親権者変更調停」を申し立てます。調停が不成立となった場合は「審判」に移行し、裁判官が判断を下す流れです。(参照:裁判所|親権者変更調停

変更を申し立てる際は、父親側に安定した養育環境が整っていることが大前提となります。親権者変更の申し立てを行う場合は、弁護士への相談がおすすめです。

丸の内ソレイユ法律事務所は、年間900件以上のご相談をいただく、離婚や親権問題に精通した弁護士事務所です。親権者変更をご検討されている方は、ぜひ一度無料相談を活用し、早めにご相談ください。

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別居期間1年未満で夫が親権を獲得した事例

実際に弊所にご相談いただき解決した事例を紹介します。

ご依頼の経緯

Hさんの妻は非常にハードな内容のチャットレディをしていました。(軽い精神的な病気も抱えていた)

見かねたHさんは子供を連れて家出し、別居を開始しました。

別居中もHさんは、ブログに育児の状況を載せて妻にも子供が見れるようにしていました。

しかし、別居から3,4ヶ月経った段階で妻が訴訟を起こしました。

当事務所の対応

Hさんは弁護士に依頼し、裁判の結果親権を獲得しました。

別居期間1年未満のスピード解決でした。(面会交流は月に1回です)

関連記事:別居期間1年未満で夫が親権を獲得した事例

上記のようなトラブルの際は、ぜひ弊所にご相談ください。女性の初回相談は無料ですので、離婚時の財産分与にお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

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父親の親権に関するよくある質問

父親が親権を持つと養育費はどうなりますか?

父親が親権を持った場合は、非親権者である母親から養育費を受け取ることができます。

養育費は、親権者かどうかにかかわらず、子どもの扶養義務を持つ親双方が負担するものです。

これは父親が親権者となった場合も変わらず、非親権者となった母親は、その収入に応じて養育費を支払う義務を負います。

養育費の金額は、父母双方の収入バランスに応じて決めるもので、裁判所が公表している「養育費算定表」を目安に、話し合いで決定するのが一般的です。

父親が親権を持つデメリットはありますか?

父親が親権を持つことに対しては、「デメリット」よりも「現実的な責任」が生じます。具体的には、以下のような負担や責任が考えられます。

項目 詳細
育児と仕事の両立 残業や出張が制限されるなど、キャリアへの影響が出る可能性
日々の送迎、食事、病気の看病などによる時間的・体力的な負担
最終決定の責任 子どもの進学、治療、引っ越しなど、人生に関わる重大な判断を一人で下す精神的重圧
社会的側面 職場や地域で「父子家庭」であることへの理解が十分でない場合の苦労
再婚への影響 新しいパートナーと子どもとの関係構築の難しさ

親権者となることは、子どもの人生に対する最終的な決定責任を一人で負うことです。これらはデメリットではなく、親として向き合うべき当然の課題といえるでしょう。

共同親権の施行後、父親も親権を取れますか?

共同親権制度が導入されても、「子の利益」が最優先であることに変わりはありません。

2024年に共同親権を導入する民法改正案が成立し、2026年5月までに施行予定です。(参照:法務省|民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕

施行後は、離婚時に父母の協議によって「共同親権」か「単独親権」を選ぶことになります。協議がまとまらない場合は、家庭裁判所が「子の利益」の観点から、DVや虐待の有無、これまでの養育実績などを総合的に考慮します。

共同親権が導入されても、DVなどがあるケースでは単独親権が認められる見込みです。

「共同親権=自動的に父親も親権者」となるわけではありません。

父親が親権(単独または共同)を持つためには、これまで以上に積極的に育児に関与し、その実績を示すことが重要になります。

まとめ|父親の親権問題で悩んだら弁護士に相談しよう

親権は、子どもの将来の幸福を守り、父親として関わり続けるための極めて重要な権利です。

しかし、統計上は母親が親権者となるケースが多く、父親側が親権を得るには法的な戦略と客観的な証拠(監護実績)が不可欠です。

感情的な対立も絡むため、当事者同士での話し合いは難航しやすいのが実情です。

弁護士に依頼すれば、専門的な知識に基づき、「子の利益」の観点から親権者としての適格性を論理的に主張できます。「自分(父親)が親権者になるのは難しいと諦めている」「どのような証拠を集めれば有利になるかわからない」などの方は、弁護士への相談をおすすめします。

父親の親権に関する問題でお悩みの方は、離婚問題に強い丸の内ソレイユ法律事務所にご相談ください。

あなたの「子どもと生きていきたい」という強い想いを、法的な側面からしっかりサポートします。まずは一度、お気軽にご連絡ください。

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