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養育費の一括払いはできる?デメリットや贈与税がかからない方法を弁護士が解説

養育費の一括払いはできる?デメリットや贈与税がかからない方法を弁護士が解説

「将来の未払いを防ぐため、養育費はできるだけ一括で受け取りたい」
「毎月の請求や振込確認といった手間をなくすため、一括払いで合意したい」
養育費の一括払いは将来の未払いリスクを回避し、まとまった資金を確保できる魅力的な選択肢に見えます。
しかし、養育費を一括払いで受け取る場合、「将来事情が変わっても追加請求が原則できなくなる」といった法的なデメリットや、受け取り方によっては「贈与税」が課税され、手取り額が大きく減ってしまうリスクもあります。
この記事では、養育費の一括払いが法的に可能なのか、実行する前に知っておくべきデメリット、そして贈与税を課されずに受け取るための正しい方法について解説します。

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養育費の一括払いはできる?基本ルール

養育費は、本来子どもの日々の生活や成長のために月々受け取る「分割払い」が原則とされています。

しかし、当事者である父母が合意さえすれば、将来の分も含めて「一括払い」を選択することも可能です。

まずは、養育費一括払いの基本的なルールと考え方を解説します。

養育費の原則は分割払い(月払い)

養育費は、子どもの生活や教育に必要な費用を、継続的に支えるためのものです。その性質上、子どもの成長に合わせて必要な支出が発生するため、月ごとに支払う「分割払い(月払い)」が最も現実的とされています。

実際、家庭裁判所の調停や審判でも、両親の収入や子どもの年齢をもとに「月額」の金額を算出するのが基本です。

裁判所の公式サイトでも、次のように説明されています。

養育費の調停・審判においては、養育費額の目安として、「算定表」が参照されることが一般的です。「算定表」は、両親双方の収入額と、子の年齢・人数に応じ、標準的な養育費額の目安を算出するものです。

引用:裁判所-養育費に関する手続

この「養育費算定表」は、生活費や教育費などのデータをもとに月単位で費用を試算する仕組みであり、調停・審判ではこの月額を基準に支払いが命じられるのが一般的です。

そのため、実務上も「月額○円を毎月支払う」という形が、養育費の取り決め方法として定着しています。

関連記事:離婚時に知っておきたい養育費の基本|相場・期間・取り決め方法を解説

合意すれば一括払いも選択できる

養育費は実務上、月払いが基本とされていますが、法律で一括払いが明確に禁止されているわけではありません。

離婚時の話し合い(協議)において、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の双方が納得し、「一括で支払う」と合意するのであれば、一括払いを選択することも法的に認められています。

支払い方法 特徴
分割払い(月払い) 月々の支払い。算定表に基づき、最も一般的な形式。
一括払い 将来分をまとめて支払う方式。合意があれば法的にも有効。

ただし、あくまで当事者間の合意が前提となる点に注意が必要です。支払う側(義務者)が反対しているにもかかわらず、家庭裁判所の調停や審判で、一括払いを強制的に認めさせることはできません。

将来の未払いリスクを懸念して一括払いを望む場合でも、まずは相手の合意を得られるかどうかが重要です。

養育費を一括払いにするメリット・デメリット

養育費の一括払いは、将来の未払いを防ぐ有効な方法ですが、受け取る側には税金や将来の追加請求に関する注意点もあります。

「まとまったお金を先に受け取れるなら安心」と安易に判断するのではなく、メリットとデメリットの両方を比較しましょう。ご自身の状況にとって、一括払いが本当に有利な選択かどうか、慎重に見極めることが大切です。

一括払いで受け取るメリット

受け取る側(権利者)にとって、一括払いを選択する最大のメリットは、将来の未払いの心配がなくなることです。

その他、主なメリットは以下のような内容が挙げられます。

  • 相手の支払い遅延・未払いの心配がない
  • 離婚後の金銭トラブルや催促のストレスから解放される
  • 転職・再婚など相手の事情に左右されない
  • まとまった資金を教育費や貯蓄に計画的に使える

厚生労働省の調査(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)によれば、養育費を「現在も受けている」母子家庭は28.1%に留まります。

月払いの場合、支払いが遅れるたびに相手へ催促しなければならず、離婚後も金銭のやり取りが続くことになります。

相手の転職や再婚による減額などを心配する必要がなくなる点は、心理的にも大きな安心材料です。

また、一括払いによって金銭関係を整理できるため、相手と連絡を取り続ける負担も減ります。

さらに、受け取ったまとまった資金を、学資保険の支払いや将来の進学費用として計画的に貯蓄・運用に回せるという側面もあります。

一括払いで受け取るデメリットとリスク

養育費の一括払いには利点もありますが、受け取る側(権利者)が負うことになるデメリットも存在します。

リスクの種類 内容
税金のリスク 将来分をまとめて受け取ると「過大な贈与」とみなされ、贈与税の課税対象になる場合がある。
金額の減少 中間利息控除により、一括払いにした際の受取額が、月払いの総額より少なくなる場合がある。
資金管理の負担 受け取った大金を長期的に管理する必要があり、不足してしまった場合も再請求は不可。
追加請求が難しい 一括払いをもって「支払い完了」とみなされるため、将来の追加負担を求めにくい。

まず、贈与税が課される可能性です。養育費は本来、子どもの生活や教育に必要な金額が都度支払われるため非課税ですが、将来分をまとめて受け取ると「過大な贈与」とみなされ、課税対象になることがあります。

さらに、中間利息控除によって金額が減らされる可能性がある点にも注意が必要です。将来分を前倒しで受け取るため、「月額 × 残りの月数」が満額支払われるわけではなく、利息分が差し引かれることがあります。

加えて、長期間にわたってまとまった資金を管理する責任が生じる点にも注意が必要です。万が一使い込んでしまっても、再請求はできません。

そのため、子どもの進学や病気などで費用が増えても、追加の支払いを求めるのは難しくなります。

養育費一括払いの金額を計算する方法

養育費を一括で受け取る場合、金額は単純に「月額 × 残りの月数」では計算されません。

なぜなら、今まとまった金額を受け取れば、その資金を銀行に預けたり運用したりして利息(運用益)を得られる可能性があるからです。

将来得られるはずの利益(中間利息)をあらかじめ差し引いて、公平性を保つ調整(中間利息控除)を行い、残りの金額が養育費として支払われます。

1.月額養育費を合計する

まずは、もし月払いを続けた場合に、最終的に受け取る総額がいくらになるかを算出します。

計算式は「月額養育費 × 支払い月数」です。

たとえば、月6万円で子どもが11歳から20歳まで(10年間・120か月)受け取る場合、6万円 × 120か月 = 720万円 となります。(※成人年齢は18歳ですが、養育費の支払終期は20歳または大学卒業までとするケースが多いため)

ただし、これは「10年間に分割して受け取る総額」です。

一括払いの場合は、この720万円をまとめて受け取ることになるため、将来分を前倒しで受領する分、金額を少し減らして調整します。これが中間利息控除と呼ばれる仕組みです。

2.中間利息控除(ライプニッツ係数)で調整する

一括額は法定利率(原則年3%・変動制)等を前提に年単位の係数で割り引く計算方法が一般的です。

先ほどの例で算出した720万円は、10年間に分割して受け取る総額です。 一括払いの場合は、この金額を「現在の価値」に換算して支払額を決めます。

この割引計算に使われるのが「ライプニッツ係数」です。

2025年10月時点では、法定利率が年3%、期間が10年の場合、係数は約8.53となり、計算式は次のとおりです。

【月6万円 × 12か月 × 8.53 = 約614万円】

つまり、月払いで受領する場合に総額720万円となる養育費も、一括で受け取る場合は約614万円となり、約106万円が利息分として差し引かれる計算になります。

なお、法定利率は3年ごとに見直される変動制のため、今後の計算結果は変わる可能性があります。

係数の算出は専門的なため、最終的な金額を検討する際は弁護士などの専門家に相談するのが安心です。

「信託契約」で贈与税をかけずに養育費を受け取るための工夫

受け取る側(権利者)が、将来の分まで含めた養育費の全額を、単純に銀行振込など一括で受け取ると、税務署から「過大な贈与」とみなされ、高額な贈与税の課税対象となる可能性があります。

しかし、「将来の未払いリスクをなくしたい」という目的を達成しつつ、この贈与税の課税を合法的に回避する方法があります。それが、「信託契約」を活用する方法です。

信託契約の仕組みと、その効果・注意点をまとめると以下の通りです。

項目 内容
信託契約の仕組み 養育費を支払う側(委託者)が、信託銀行などの第三者(受託者)に財産(一括払いの養育費全額)を預け、第三者が受け取る側(受益者=子)のためにその財産を管理・給付(毎月分割で支払う)する契約。
主なメリット(効果) 1. 贈与税の回避: 信託銀行から「毎月の生活費」として分割で給付されるため、税務上「扶養義務の履行」とみなされ、贈与税がかからない。
2. 未払いリスクの回避: 支払う側が契約時に全額を信託銀行へ預けるため、相手の経済状況に左右されず、養育費の支払が保証される。
主な注意点(デメリット) 1. パッケージ商品ではない: 一般的に「養育費信託」という金融商品はほとんど存在しない。
2. 専門家による設計が必要: 弁護士などが関与し、合意内容(公正証書など)に基づいて個別に契約を設計する必要がある。
3. 別途費用がかかる: 弁護士費用や信託銀行の信託手数料(管理費用)が発生する。

子どもの「生活費」も含めて将来の全額を法的に確保しつつ、贈与税の課税も回避したい場合に、この「信託契約」の活用は有効な手段となります。

養育費の一括払いが児童扶養手当に与える影響

養育費の一括払いは、将来の未払いリスクを回避できる有効な手段ですが、児童扶養手当の受給資格には大きな影響を与える可能性があります。

高額な一時金を受け取ることで、翌年度の手当が減額されたり、全額支給停止となったりする可能性があります。その基準を正しく把握しておくことが重要です。

ここでは、どのような場合に手当が減額・停止となるのかを詳しく解説します。

一括払いで手当が減額・停止される基準

児童扶養手当の支給額は、前年の「所得」に基づいて審査・決定されます。

この審査における「所得」には、給与所得などに加え、「受け取った養育費の8割相当額」も含まれます。これは、受け取った養育費の8割相当額が、受取人の所得として算入される仕組みとなっているためです。

児童扶養手当には所得制限限度額が設けられており、一括払いによって所得がこの限度額を大幅に超えてしまうと、翌年度の手当は「全部支給停止」または「一部支給停止(減額)」となるため注意が必要です。

扶養親族等の数 全部支給の所得限度額 一部支給の所得限度額
0人 69万円 208万円
1人 107万円 246万円
2人 145万円 284万円
3人 183万円 322万円
4人 221万円 360万円
5人 259万円 398万円

出典:東京都福祉局 児童扶養手当

※上記は「給与などの所得」と「養育費(8割相当)」を合算した後の合計所得で判定されます。

一括払いで受け取った後に手当を再開できる条件

児童扶養手当は、「資産(貯金残高)」ではなく、「前年の所得」に基づいて毎年審査されます。

そのため、一括払いを受けたことによって手当が停止されたとしても、その効力が永久に続くわけではありません。

例えば、2025年に500万円を一括で受け取った場合、以下の通りです。

審査年度 所得の基準となる年 所得に含まれる内容 児童扶養手当への影響
2026年度 2025年 通常の給与所得 + 一括払金の約8割相当額 所得制限を超える可能性が高く、手当が減額・停止されるおそれがある。
2027年度 2026年 通常の給与所得のみ(※一括払金の影響なし) 所得が基準内に戻り、手当が再開される可能性がある。

この2026年の所得が所得制限限度額を下回れば、2027年度からは手当の支給が再開されます。

つまり、一括払いによる手当の停止は、原則として「翌年度の1年間」が対象です。「翌々年度」になれば所得基準が元に戻り、再開する可能性が高くなります。

判定基準は毎年度見直しや自治体の運用差があります。直近年度の基準を必ず自治体窓口で確認してください。

養育費の一括払いの取り決め方法

当事者間で養育費の一括払いを合意する場合は、「どのように取り決めるか」が非常に重要です。単なる口約束では、後に「言った・言わない」のトラブルや、支払いの不履行が起きるおそれがあります。

取り決めの方法は主に以下の2つです。

  • 当事者間で合意書・公正証書を作成する方法
  • 家庭裁判所の養育費調停で合意内容を確定させる方法

どちらの方法でも、法的に有効な形で「金額」「支払範囲」「不払い時の対応」を明確にしておくことが大切です。

ここでは、それぞれの特徴と手続きの流れを解説します。

1.合意書・公正証書に明記する

養育費の一括払いは、口約束では法的効力がなく、トラブルの原因になります。

必ず書面で合意内容を残し、できれば公証役場で「公正証書」を作成しておきましょう。

公正証書にしておくと、万が一支払いが滞った場合でも、裁判を経ずに差し押さえ(強制執行)が可能です。

一括払いを取り決める際は、特に次の3点を文書に入れることが重要となります。

項目 何を決めるか なぜ必要か(目的)
清算条項 一括払金でどの範囲の支払いを終わりとするかを明確にする(例:「子が20歳に達するまでの養育費全額として○○万円を支払う」) 範囲を曖昧にすると「支払い済み」とみなされ、追加の請求ができなくなるリスクがある。
留保条項 将来、追加で請求できる条件を残す(例:「大学進学費用については別途協議する」) 教育費など想定外の出費に対応できる。これを入れないと追加請求がほぼ不可能になる。
強制執行認諾文言 「支払いが行われなかった場合、強制執行を認める」旨を記載 不払い時に裁判を起こさず、相手の財産を差し押さえることができる。確実に回収できる裏付けになる。

まず「清算条項」で、「満20歳までの全費用」など、その一括払金で支払いが完了する範囲を確定させます。

もし将来、大学費用などを別途請求する可能性を残したい場合は、必ず「留保条項」として「学費については別途協議する」といった例外規定を明記しなければなりません。この留保条項の記載がない限り、後からの追加請求は極めて困難です。

さらに、一括払金自体の不払いに備え、「強制執行認諾文言」を盛り込むことで、万が一支払われなかった場合に、裁判なしで相手の財産を差し押さえることが可能になります。

2.養育費調停で取り決める

当事者間で一括払いの合意が難しい場合は、家庭裁判所の「養育費調停」を利用する方法があります。

調停では、裁判所に所属する調停委員が双方の意見を聞き取りながら、支払金額や方法、支払時期などの条件をすり合わせてくれます。

合意に至った場合、その内容は「調停調書」として正式に記録され、法的拘束力が生じます。(この調停調書は、それ自体が判決と同じ効力を持つ「債務名義」となるため、公正証書のように別途「強制執行認諾文言」を記載する必要はありません)

万が一、約束どおり支払われない場合でも、この調書をもとに強制執行(差し押さえなど)を行うことが可能です。

  1. 申立て:家庭裁判所に「養育費請求調停」または「養育費変更調停」を申し立てる。
  2. 期日決定:裁判所と初回期日を調整し、初回期日の指定を受ける。
  3. 事情説明:調停委員に一括払いを希望する理由や金額の根拠を伝える。
  4. 条件調整:調停委員を介して相手方と金額・支払時期・方法などをすり合わせる。
  5. 合意成立:合意内容が「調停調書」として正式に記録され、法的拘束力を持つ。
  6. 支払い実行:期日までに一括払いを受け、支払いがなければ強制執行が可能。

また、調停の場では、一括払いに関して「贈与税のリスク」や「将来の追加請求の可否」なども含め、第三者の立場から公正に整理してもらえる点が大きなメリットです。

感情的な対立を避けながら、法的にも確実な形で一括払いを取り決めたい場合に有効な手段といえます。

関連記事:養育費請求調停の流れを解説|申立て手順・当日の進め方・成立後の対応

納得いく養育費と解決金を獲得できた事例

実際に弊所にご相談いただき解決した事例を紹介します。

ご依頼の経緯

同居期間:約17年。

別居期間:受任時点で約4年半。

当事務所の対応

妻が既に離婚調停を申立済みだったため、第2回期日から代理人として出頭。

婚姻費用分担調停の申立て。

【結果】

調停にて離婚成立。

婚姻費用は離婚成立まで仮払いをしてもらっており、住宅ローン借り換え完了後は年収を争うことをやめて離婚を成立させたため、未払の清算はしなかった。

離婚条件は、①養育費月額20万円を大学卒業まで支払ってもらうこと、②解決金265万円を支払ってもらうことで合意した。

関連記事:納得いく養育費と解決金を獲得した事例

上記のようなトラブルの際は、ぜひ弊所にご相談ください。女性の初回相談は無料ですので、離婚時の財産分与にお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

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養育費の一括払いに関するよくある質問

裁判で一括払いを命じてもらえる?

裁判(や審判)で養育費の一括払いが命じられることはありません。

養育費は「子どもの成長に応じて必要となる生活費」であり、将来の生活状況や収入の変化を考慮しやすい月払い(分割払い)が基本とされているためです。

ただし、支払う側が「安定した収入がなく、継続的な支払いが難しい」と判断されるよほど特別な事情がある場合には、当事者の合意を前提として一括払いが認められるケースもまれにですがあります。

そのため、裁判所に強制的に命じてもらうことを期待せず、双方の合意を文書化する形(合意書・調停調書など)で進めるのが現実的です。

一括払い後に追加請求はできる?

一括払いで受け取った場合、その合意(清算条項)で定められた範囲については、追加請求が極めて困難になります。「これをもって養育費に関する支払いはすべて完了した」と法的に解釈されるためです。

そのため、子どもが私立大学に進学したり、予想外の出費が生じたりしても、新たに増額を求めるのは難しくなります。

どうしても追加が必要な場合は、「当初の合意内容では想定できなかった特別な事情(子どもの重大な病気や障がいなど)」があることを法的に示し、再度協議をしたり調停を申し立てる必要があります。

養育費の一括払いを選ぶ際は「将来の変化にも対応できるか」をよく考え、公正証書や調停調書に『留保条項(大学学費や留学費用などは別途協議する、など)』を明記しておくことが重要です。

不動産や財産分与で代替できる?

お互いが合意すれば、現金ではなく不動産(家など)で代わりに支払うことも可能です。これを法的に「代物弁済(だいぶつべんさい)」と呼びます。

ただし、現金の代わりに不動産で受け取ることには、現金にはない大きな注意点があります。不動産は「資産」であり、すぐに現金化できるとは限りません。いざ学費などで現金が必要になっても、想定より安くしか売れないリスクがあります。

また、現金と違って、不動産は所有しているだけで毎年の「固定資産税」や将来の「修繕費」といった維持コストがかかり続けます。養育費の代わりにもらったはずが、かえって支出が増える可能性も考慮し、慎重に判断する必要があります。

一括払いを請求しても相手が払えない場合の対処法は?

養育費の一括払いは、裁判所が相手に一括払いを強制できず、相手の合意がなければ成立しません。もし相手にまとまったお金がなく、一括払いが難しい場合は、別の方法を考える必要があります。

例えば、「全額は無理でも3年分だけ」と一部一括払いを交渉するか、月払いに切り替える判断が必要です。 月払いに切り替える場合は、将来の未払いを防ぐため、必ず「強制執行認諾文言付きの公正証書」を作成しましょう。

一方で、すでに「一括で支払う」と合意したにも関わらず、期日になっても支払われない場合は、どのような書面で合意したかが重要です。

もし「強制執行認諾文言付きの公正証書」を作成していれば、裁判を起こす必要はなく、直ちに相手の給与や預金口座を差し押さえる「強制執行」の手続きが可能です。

公正証書がない(合意書のみの)場合は、まず裁判を起こして支払い命令(債務名義)を得る必要があります。

まとめ|養育費の一括払いは慎重に検討しよう

養育費の一括払いは、将来の未払いリスクを根本から解消できる、受け取る側にとって魅力的な選択肢です。

しかし、高額な「贈与税」が課されるリスクや、「児童扶養手当」が一時的に停止される可能性、そして将来の追加請求が原則としてできなくなるといったデメリットも存在します。

そのため、養育費の一括払いでの受け取りが、ご自身の状況に本当に合っているかを慎重に見極めなければなりません。

特に、贈与税を回避するための方法や、将来の学費などを「留保条項」として公正証書に明記するには、専門的な知識が必要です。

「弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所」は、これまで数多くの離婚・養育費問題を取り扱ってきました。養育費を一括払いにするリスク判断、公正証書の作成など、専門家が一貫してサポートいたします。

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