離婚・男女問題などでお悩みの方は
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通帳開示を拒否されても、裁判所の手続きを通じて強制的に開示させる方法があります。本記事ではその具体的な流れを解説しますので、正しい知識を持ち、冷静に対応できるよう備えましょう。
離婚時の財産分与や通帳開示のトラブルでお悩みの方は、ぜひ「丸の内ソレイユ法律事務所」にご相談ください。
財産分与に精通した弁護士が、あなたの状況に合わせた最適な解決策を提案し、交渉から法的手続きまで力強くサポートします。
財産分与における通帳開示の基本的情報
財産分与を正しく進める上で、通帳開示に関する基本情報には押さえておくべき2つのポイントがあります。
- 通帳開示が必要となる理由と目的
- 財産分与の対象になる預貯金の種類
ここでは、適正な財産分与をするために知っておくべき基本的な知識を整理して解説します。
通帳開示が必要となる理由と目的
正当な財産分与を行うためには、まず夫婦が婚姻期間中に形成した共有財産を正確に把握することが不可欠です。その中心となるのが預貯金の確認であり、そのために通帳開示が必要となります。
離婚時の財産分与は、原則として夫婦の共有財産を2分の1ずつに分けるルール(2分の1ルール)に基づいて行われます。
しかし、相手名義の口座の中身が不明なままでは、財産全体を正しく評価できず、公平な分配は不可能です。
また、離婚直前に不自然な出金がないか、財産隠しの疑いがある行為が行われていないかを確認するためにも、通帳や取引履歴の開示は不可欠です。
開示された情報をもとに、夫婦双方が納得できる形で財産分与の話し合いを進めるための基本的な出発点と言えるでしょう。
参照:法務省|財産分与
財産分与の対象になる預貯金の種類
財産分与の対象になる預貯金は、婚姻期間中に夫婦が協力して得た収入を原資とするものです。これには、以下のようなものが含まれます。
- 夫または妻名義の給与振込口座の預貯金
- 生活費の余剰分を貯めていた口座の預貯金
- 将来のために積み立てていた定期預金
- へそくりとして貯めていた預貯金
重要なのは、「口座の名義がどちらであるかは関係ない」という点です。
たとえ専業主婦(主夫)の配偶者名義の口座であっても、その原資が夫婦の共有財産であれば、財産分与の対象になります。夫婦の協力があったからこそ貯蓄できた財産だと考えられるためです。
>関連記事:離婚時の財産分与とは?対象になるもの・ならないものや有利に進めるコツを弁護士が解説
通帳開示に関する法的ルール
相手が通帳開示に応じない場合、法的にどこまで対抗できるかを知ることが重要です。通帳開示に関する法的ルールには、主に3つの側面があります。
- 離婚における通帳開示の範囲はどこまでか
- 通帳開示に法律上の義務があるのか
- 裁判所で開示を強制できるのか
ここでは、開示を求められる範囲や、協議段階での法的義務の有無、そして最終的に裁判所を通じて強制できるのかといった、具体的な法的ルールについて詳しく解説します。
離婚における通帳開示の範囲はどこまでか
通帳開示を求める場合、その範囲は無制限に認められるわけではありません。
財産分与の基準時は「別居時」(同居している場合は離婚時)とされているため、少なくとも「婚姻時から別居時まで」の取引履歴が開示の対象になることがあります。
ただ実務上、婚姻期間中すべての取引履歴を開示することはほとんどありません。財産形成の経緯を確認するために、半年から1年の履歴を確認することが多いです。
この期間の入出金の流れを確認することで、共有財産の形成過程や、不自然な資金の動きがないかをチェックできます。
特に、別居直前に多額の出金がある場合などは、財産隠しが疑われるため、その使途を明らかにする必要があります。
過去に遡りすぎる要求は相手の反発を招く可能性があるため、まずは取引履歴の開示を求めることを選択肢の一つとして考えておきましょう。
通帳開示に法律上の義務があるのか
夫婦間の協議離婚の段階では、相手に通帳開示を直ちに強制できる法律上の規定はありません。
ただし、信義誠実の原則に基づき、双方が誠実に財産分与の協議を進めることが求められます。
しかし、相手がこの協力義務に反して開示を拒み続ける場合、話し合いでの解決は困難になります。
開示が得られない場合は、家庭裁判所の調停や審判を通じて強制的に開示させる制度が利用可能です。
そのため、協議で開示が実現しない場合は、次のステップとして、家庭裁判所での調停や審判、訴訟といった法的手続きの検討が必要です。
これらの手続きの中では、単なるお願いとは異なり、より強制力のある手段を用いることが可能になります。
裁判所で開示を強制できるのか
当事者間の話し合いで解決しない場合、家庭裁判所の手続を利用すれば、裁判所を通じて金融機関に情報の開示を求めることが可能です。これは非常に強力な手段であり、主に二つの方法があります。
一つは「調査嘱託」です。これは、裁判所が金融機関などの団体に対して、必要な事項の調査を依頼する手続きです。これにより、相手の口座の有無や残高、取引履歴などを照会できます。
もう一つは「文書提出命令」です。民事訴訟手続きにおいて、裁判所が訴訟に関係する文書の所持者(相手方当事者または第三者)に対し、その文書の提出を命じる制度です。
相手方が所持している通帳などの文書を裁判所に提出するよう命じられます。また、金融機関などに提出を求めることもあります。
正当な理由なく命令に従わない場合は、過料の制裁が科されることもあります。これらの手続きは、財産隠しが疑われるケースにおいて、真実を明らかにするための切り札となります。
通帳開示を求めるときの注意点
相手に通帳開示を求める際には、交渉を有利に進めるために注意すべき点が3つあります。
- 開示を求める範囲と時期を明確にする
- 子ども名義の預貯金について話し合う
- 離婚前に預貯金が引き出されたら共有財産だけど返還が叶わないこともある
やみくもに開示を要求しても、相手の警戒心を強め、かえって交渉が難航する可能性があります。ここでは、スムーズに開示を実現し、適切な財産分与につなげるための注意点を解説します。
1.開示を求める範囲と時期を明確にする
相手に通帳開示を要求する際は、「すべての通帳を、過去何十年分も見せろ」といった漠然とした要求は避けるべきです。感情的な対立を生むだけでなく、相手に「プライバシーを侵害される」という警戒心を与えてしまいます。
「財産分与の対象となる共有財産を確認するため、〇年〇月〜〇年〇月までの取引履歴の開示をお願いします」というように、目的・範囲・期間を具体的に特定して伝えましょう。
目的を明確にすることで、要求の正当性が伝わりやすくなり、相手も協力に応じやすくなる可能性があります。
2.子ども名義の預貯金について話し合う
子ども名義の口座については、出所 (原資)がどこかが重要です。親からの仕送り・生活費の余剰分が積み立てられている場合は、夫婦の共有財産とみなされる可能性があります。
一方で、お年玉や祖父母からの贈与など、子ども固有の資産であると明確に区別できる場合は「子の財産」となります。実際の判断は裁判所でもケースごとに分かれるため、弁護士に確認することが安心です。
3.離婚前に預貯金が引き出されたら共有財産だけど返還が叶わないこともある
別居直前や離婚協議中に、相手が共有財産の預貯金を無断で多額に引き出してしまうケースがあります。この引き出されたお金も、原則としては共有財産であり、財産分与の対象になります。
相手が個人的な遊興費などに使ってしまった場合、その金額を考慮して財産分与の額を算定することになります。
しかし、注意しなければならないのは、相手がすでにそのお金を費消してしまい、他にめぼしい財産を持っていない場合です。この場合、法的に返還を求める権利があったとしても、現実的に回収することが困難になるリスクがあります。
相手の不審な動きに気づいたら、早めに弁護士に相談し、財産保全の手続きなどを検討することも必要です。
通帳開示請求にかかる費用の目安
通帳開示は、法的手続きを通じて行う場合、一定の費用が発生します。主な費用は、弁護士に依頼する場合の弁護士費用と、裁判所に手続きを申し立てる際の実費です。
弁護士費用は法律事務所によって異なりますが、以下は当事務所を利用した場合(未成熟子のお子様がいらっしゃる場合)の費用目安になります。
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費用の内訳 |
説明 |
費用 |
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相談料 |
女性限定初回60分無料 |
60分超過後
男性の初回相談
2回目以降一律
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着手金(未成熟子のお子様がいる場合) |
依頼時に支払う費用 |
調停:550,000円(税込) (協議→調停は差額110,000円のみ) 裁判:660,000円(税込) (調停→裁判は差額110,000円のみ) |
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報酬金 |
事件解決時に、得られた経済的利益に応じて支払う成功報酬 |
調停:550,000円(税込) 裁判:660,000円(税込) ※上記に加えて経済的利益の11%(税込) |
当事務所の弁護士費用についてはこちらで詳しく解説していますのでご覧下さい。
裁判所の手続きにかかる実費の目安は以下の通りです。
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費用の内訳 |
費用 |
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収入印紙代 |
調停申立てで1,200円程度 |
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郵便切手代 |
裁判所からの書類送付用で数千円程度 |
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調査嘱託の費用 |
金融機関に支払う手数料で数千円程度 |
これらの費用はあくまで目安であり、事案の複雑さによって変動します。まずは法律相談を利用して、ご自身のケースではどの程度の費用が見込まれるかを確認すると良いでしょう。
【ステップ別】通帳開示を実現するための具体的な手順
相手が通帳開示を拒否した場合でも、段階的に対応することで開示を実現できる可能性があります。開示を実現するための手順は、大きく分けて3つのステップがあります。
- ステップ1:弁護士を介した協議で任意開示を求める
- ステップ2:弁護士会照会制度で通帳開示を求める
- ステップ3:調停・審判・訴訟で調査嘱託や文書提出命令を申し立てる
ここでは、法的な手続きを含め、具体的な手順をステップごとに解説します。
ステップ1:弁護士を介した協議で任意開示を求める
配偶者から預貯金の通帳開示を拒否されたら、弁護士に離婚交渉を依頼し、弁護士を通じて開示を請求する方法が挙げられます。
財産分与を回避しようとする配偶者であっても、弁護士から正式に請求を受けることで、財産を隠し通すことは困難であると認識し、調停・訴訟に至る前に任意で通帳等を開示するケースも少なくありません。
さらに、当事者間の協議において、相手が離婚そのものを拒否していることを理由に通帳の開示を拒む場合でも、弁護士が代理人として介入することで状況が進展することがあります。
弁護士を通じた交渉は、依頼者が離婚の意思を確定的に有していることを明確に示す効果を持ち、その結果として交渉が前進し、通帳等の開示に応じる可能性を高めることにつながります。
ステップ2:弁護士会照会制度で通帳開示を求める
弁護士を通じた交渉でも相手が通帳の開示に応じない場合、次の手段として検討されるのが「弁護士会照会制度(23条照会)」です。
これは、弁護士が所属弁護士会を通じて、金融機関などに対し口座の有無や取引履歴の開示を求めることができる制度です。
弁護士会照会では、金融機関に原則として回答義務があるとされていますが、実務上は”名義人本人の同意がない限り回答しない”とされるケースも多いのが実情です。
そのため、必ず情報を得られるわけではなく、開示が不十分な場合は調停や訴訟での調査嘱託・文書提出命令を利用する必要があります。
ステップ3:調停・審判・訴訟で調査嘱託や文書提出命令を申し立てる
弁護士会照会を利用しても十分な情報が得られない場合、最終的な手段は家庭裁判所での法的手続きです。具体的には、調停や財産分与請求審判、あるいは離婚訴訟の中で「調査嘱託」や「文書提出命令」といった制度を利用します。
調査嘱託とは、裁判所が金融機関に対して直接照会を行い、預貯金の残高や取引履歴の開示を求める手続きです。
配偶者が財産を隠していると疑われる口座を特定し、その必要性を主張すれば、裁判所が照会を認め、金融機関から回答を得られるケースもあります。ただし、調停段階で調査嘱託が実施されることは多くはありません。
参照:民事訴訟法186条
一方、文書提出命令とは、民事訴訟法220条以下を根拠に、相手方や第三者が所持する文書について、提出義務がある場合に裁判所が開示を命じる手続きです。
家事事件手続法64条および258条により、家事審判や調停の場面でもこの手続きを申し立てることが可能とされています。
裁判所を通じたこれらの手続きは強制力を伴うため、財産隠しの疑いが強い場合には、実効性の高い最終的な解決手段となります。
参照:家事事件手続法第64条第1項および258条
通帳開示トラブルを弁護士に依頼するメリット
通帳開示に関するトラブルを専門家である弁護士に依頼することには、主に3つの大きなメリットがあります。
- 評価が難しい財産を適正に評価してもらえる
- 相手との交渉ストレスを軽減できる
- 法的手続きをスムーズに進められる
当事者だけで解決しようとすると、精神的な負担が大きく、法的な知識不足から不利な状況に陥ることもあります。弁護士に依頼することで、これらの問題を解決に導くことができます。
1.評価が難しい財産を適正に評価してもらえる
財産分与の対象は預貯金だけではありません。不動産、株式、保険、退職金など、多岐にわたる財産が含まれることが多く、これらの価値を正確に評価するには専門的な知識が必要です。
例えば、不動産の評価額や、将来受け取る退職金の現在価値の算定などは非常に複雑です。弁護士に依頼すれば、提携する不動産鑑定士や税理士などの専門家と連携し、すべての財産を法的に適正な価格で評価してくれます。
これにより、あなたが本来受け取るべき財産の漏れや過小評価を防ぎ、最大限の利益を確保することにつながります。
2.相手との交渉ストレスを軽減できる
離婚の話し合い、特に財産に関する交渉は、精神的に大きなストレスを伴います。相手が開示を拒否している状況では、なおさらでしょう。つい感情的になってしまい、話し合いが全く進まなくなることも珍しくありません。
弁護士に依頼すれば、あなたの代理人として相手との交渉窓口に立ってもらえます。相手と直接顔を合わせたり、連絡を取り合ったりする必要がなくなるため、精神的な負担が大幅に軽減されます。
冷静な第三者である弁護士が交渉することで、感情論ではなく法的な根拠に基づいた建設的な話し合いを進めることができ、スムーズな解決が期待できます。
3.法的手続きをスムーズに進められる
通帳開示を実現するために調停や訴訟といった法的手続きが必要になった場合、申立書の作成や証拠の準備、裁判所への出廷など、専門的な対応が求められます。
仕事や育児をしながら、これらの手続きを一人で行うのは現実的ではありません。弁護士に依頼することで、これらの複雑な法的手続きをすべて代行してくれます。
必要な書類を不備なく作成し、裁判所であなたの主張を的確に代弁してくれるため、安心して本業や日常生活に集中できます。法的な手続きを迅速かつ適切に進めることで、問題の早期解決にもつながります。
財産分与と通帳開示に関するよくある質問
相手の銀行名がわからない場合でも調査できますか?
通帳開示請求するには、相手の金融機関と支店が必要です。相手が利用している金融機関がわからない場合は、以下のような手掛かりを探してみましょう。
- 金融機関からのDM
- 過去の給与明細
- キャッシュカード
- クレジットカードの引き落とし情報
その上で弁護士会照会を利用し、銀行本店に一括で照会をかけることで、取引支店を特定できる場合があります。諦めずに手掛かりを探してみてください。
ただ、弁護士会照会は、離婚が成立する前の段階では回答を得られない可能性が高い点に留意しましょう。金融機関側は、夫婦間の紛争が継続中(離婚前など)の場合には「個人情報保護」を理由に回答を拒むことがあります。
そのため、離婚成立後、財産分与を請求する権利をきちんと確保してからの方が、回答を得られる可能性が高いといえます。
通帳のコピーだけでも財産分与の証拠になりますか?
同居中に撮影した通帳のコピーや写真も、共有財産の存在を示す重要な証拠となり得ます。特に、口座番号や別居時点での残高が分かるものであれば、財産分与の協議や調停で有利な材料として活用できます。
ただし、コピーだけではその後の不自然な出金などを確認できないため、可能であれば金融機関が発行する正式な「取引履歴明細書」を取得することが望ましいです。
自分で銀行に相手の通帳開示を請求できますか?
原則として、金融機関は個人情報保護の観点から、口座名義人本人以外からの開示請求には応じません。たとえ配偶者であっても、相手の同意なく取引履歴などを取り寄せることは不可能です。
これを可能にするのが、前述した裁判所の「調査嘱託」といった、正当な法的権限に基づいた手続きです。個人でできることには限界があるため、専門家の力を借りる必要があります。
別居している場合はどこまでが財産分与の対象ですか?
原則として「別居した時点」で存在した共有財産が対象になります。財産分与の基準時は「別居時」と解釈されるのが一般的です。
したがって、別居後に夫婦の一方が自身の収入で得た財産は、特有財産と見なされ、分与の対象外となります。
逆に、別居時に存在した共有財産(預貯金や不動産など)は、その後に価値が変動したとしても、基本的には分与の対象です。
別居した日を明確にしておき、その時点での財産を証明できるよう、通帳のコピーや残高証明書などを確保しておくことが重要です。
>関連記事:【一覧表あり】財産分与の対象にならないものとは?見分け方や特有財産の主張方法を弁護士が解説
まとめ|通帳開示拒否は弁護士に相談し、正当な財産分与を行いましょう!
この記事では、離婚時の財産分与で通帳開示を拒否された場合の対処法について解説しました。相手に通帳開示を拒否されると、不信感や怒りで冷静な判断が難しくなりがちです。
しかし、感情的に対立しても問題は解決しません。重要なのは、法的なルールに則って、粛々と、しかし確実に権利を主張していくことです。そのための強力なサポーターとなるのが弁護士です。
表面的な交渉テクニックだけでなく、法的手続きという最終手段まで見据えた上で、あなたにとって最も有利な解決策を導き出してくれます。
あなたの正当な権利が侵害される前に、まずは専門家である弁護士に相談し、現状を整理することから始めてみてください。
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