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共同親権でも養育費は請求できる?離婚後に後悔しないための法的ポイント

共同親権でも養育費は請求できる?離婚後に後悔しないための法的ポイント

【この記事の要点】
・支払義務は消えない:親権の形式にかかわらず、親は子に「自分と同水準の生活」を保障する「生活保持義務」を負うため、共同親権でも養育費は必要。
・法定養育費の新設:取り決めがない場合でも、法的に最低限の請求権が発生する仕組みが導入され、「もらい損ね」を防ぐセーフティネットができる。
・回収力の強化:養育費に「先取特権」が付与され、相手が破産したり差し押さえを受けた際も、他の一般債権者より優先して回収可能になる。

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はじめに:「共同親権=養育費ゼロ」という危険な誤解

2026年4月から施行される改正民法により、日本でも「共同親権」が選択可能になります。これに伴い、インターネットやSNS上では、「共同親権になれば、お互いに自分の生活費で子どもを育てるから、養育費は払わなくてよくなる」「交互に面倒を見るなら相殺されてゼロになる」といった情報が拡散されています。

しかし、弁護士の視点から申し上げますと、これらは法的に大きな誤りを含んでいます。 制度の表面的な言葉だけに惑わされ、誤った認識のまま離婚条件に合意してしまうと、子どもの生活基盤を脅かすことになりかねません。

この記事では、改正民法の条文と実務の運用に基づき、共同親権下における養育費の正しい考え方と、新設される「法定養育費」「先取特権」などの重要ルールについて詳しく解説します。

2026年法改正の全体像や他の変更点については、以下のまとめ記事で詳しく解説しています。

👉 [【2026年法改正】共同親権で何が変わる?メリット・デメリットから手続きまで完全解説]

>>弁護士費用はこちら

なぜ「共同親権でも養育費が必要」なのか?

親権と扶養義務は別物(生活保持義務)

まず大前提として、「親権(子どもの世話や財産管理をする権限)」と「扶養義務(お金を払う義務)」は、法的に別の概念です。

民法上、親は未成熟の子どもに対して「生活保持義務」を負っています。これは、「子どもに自分と同じ水準の生活をさせなければならない」という非常に強い義務です。 この義務は、親権を持っているかどうかで変わるものではありません。 たとえ共同親権となり、父母双方が親権者となったとしても、収入の高い側の親(義務者)が、収入の低い側の親(権利者・主に監護する親)に対して、その格差を埋めるためのお金を渡す必要があるという原則は維持されます。

実際の「監護実態」がベースになる

共同親権といっても、子どもが父母の家を毎日半々で行き来するケースは、子どもの通学や生活リズムを考えると、日本では限定的だと予想されます。 多くの場合、「主たる監護者(同居親)」を定めて平日はそこで生活し、週末などに「別居親」と過ごすというスタイルになるでしょう。

この場合、食費、光熱費、家賃、学費などの日常的な出費は、同居親の財布から出ていきます。したがって、別居親(または収入が多い方の親)は、その分を分担するために養育費を支払わなければならないのです。

2026年改正で「養育費」はどう変わる?(回収強化のポイント)

今回の法改正は、共同親権の導入だけでなく、長年の課題であった「養育費の不払い問題」を解消するための抜本的な改革が含まれています。これらは、親権の形に関わらずすべての離婚家庭に適用される重要な変更点です。

【新設】法定養育費制度(改正民法766条の3)

これまで、離婚時に養育費の取り決めをしていなかった場合、後から請求するには家庭裁判所に調停を申し立てる必要があり、実際に支払われるまでに長い時間がかかっていました。

改正法では、協議が整わない場合や取り決めをしていなかった場合でも、法律で定められた一定額(法定養育費)については、当然に請求権が発生するという仕組みが導入されます。 具体的な金額は政令で定められますが、例えば「子ども一人あたり月額○万円」といった基準が設けられる見込みです(なお、2025年8月法務省令案では「子ども一人あたり月額2万円」とされました。)。これにより、調停の結果を待たずとも、最低限の生活費を早期に確保できる道が開かれます。

【強化】先取特権の付与(改正民法306条等)

養育費の請求権に、「先取特権(さきどりとっけん)」が付与されます。 これは、相手方の財産に対して、他の一般の債権者(カードローン会社や個人的な借金の返済先など)よりも優先して弁済を受けられる権利です。 これまでは養育費も「ただの借金」と同じ扱いでしたが、子どもの生活を守るために優先順位が引き上げられました。

養育費を確実に受け取るための離婚協議書や公正証書の作り方は、こちらの手続きガイドをご覧ください。

👉 [共同親権の手続き完全ガイド|離婚時に必要な流れを弁護士が解説]

>>弁護士費用はこちら

共同親権の場合の養育費計算(シミュレーション)

では、具体的にいくら払うことになるのでしょうか。「共同親権だから安くなる」という噂は本当なのでしょうか。

基本は「算定表」を使用

実務では、現在も使用されている裁判所の「養育費算定表」がベースとなります。父母双方の年収を当てはめ、算出された金額が基準となります。共同親権になったからといって、この計算式自体がなくなるわけではありません。

宿泊日数が多い場合の調整(減額の可能性)

共同親権になり、別居親(支払う側)の家で子どもが過ごす日数が大幅に増えた場合(例:年間100日以上など)、その期間の食費や生活費は別居親が直接負担していることになります。 この場合、「直接負担した生活費の分だけ、養育費を減額する」という調整が行われる可能性があります。

ただし、単に「週末に遊びに来た時の食費やおもちゃ代を負担した」程度では、減額の理由にはなりません。あくまで、同居親の負担が明確に減少しているといえる程度の、継続的かつ実質的な監護実態があるかがポイントになります。

「相殺」は簡単ではない

「お互いに同じくらい稼いで、同じくらい面倒を見ているから、相殺されてゼロ」というケースも理論上はあり得ますが、実際には稀です。 収入に差があれば、稼いでいる方が差額を埋める必要がありますし、学費や医療費などの「大きな出費」をどちらが負担するかという問題も残るからです。

再婚して子どもが養子縁組をした場合の養育費の減額については、こちらの記事で詳しく解説しています。

👉 [共同親権と養子縁組の関係とは?再婚時に知っておくべき注意点を弁護士が解説]

よくあるトラブルと対処法

共同親権の導入に伴い、離婚協議の現場では新しいパターンのトラブルが予想されます。

トラブル:「共同親権にするなら養育費は払わない」と脅された

これは典型的な「取引」の持ちかけですが、応じる必要はありません。 親権の問題(子どもをどう育てるか)と、お金の問題(生活費をどう分担するか)は、リンクはしていても、取引材料にするべきものではないからです。

「養育費を放棄するなら共同親権に同意する」といった合意は、子どもの利益を害するため、後に無効とされる可能性すらあります。 このような主張をされた場合は、「法定養育費」の制度や、「生活保持義務」の原則を伝え、冷静に反論する必要があります。

トラブル:使い道を細かく監視される

共同親権を理由に、「養育費が正しく使われているかレシートを見せろ」「俺のお金を自分の服に使っているのではないか」と、過度な干渉を受けるケースです。

もちろん、養育費は子どものためのものですが、家賃や光熱費など、親の生活費と不可分な部分も多くあります。いちいち使途を報告する義務までは、通常認められません。

あまりに執拗な場合は、モラルハラスメントに該当する可能性があるため、弁護士への相談をお勧めします。

まとめ:後悔しないために「公正証書」を

共同親権制度が始まると、養育費の取り決めはこれまで以上に複雑になる可能性があります。「だいたいこれくらいでいいか」と口約束で済ませてしまうと、後で「やっぱり払わない」「共同親権だから減額しろ」と言われたときに太刀打ちできません。

  1. 監護の実態(誰がメインで育てるか)を明確にする。
  2. 具体的な金額と支払日を決める。
  3. 「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成する。

この3ステップは、2026年以降も変わりません。特に公正証書を作っておけば、万が一支払いが止まった時に、すぐに相手の給与や預金を差し押さえることができます(改正法の先取特権とも相まって、より強力な効果を発揮します)。

▼ 「適正な養育費」を確保するために

養育費は、子どもの将来を支える大切なお金です。「相場がわからない」「相手が支払いを渋っている」という場合は、弁護士にご相談ください。

弁護士が入ることで、改正法に基づく適正額の算出はもちろん、「将来の不払いに備えた強力な公正証書」を作成することができます。また、相手方が支払いに応じない場合の回収手続き(給与差押えなど)もサポート可能です。

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養育費とあわせて知っておきたい、『扶養控除』とどちらを取るべきかという問題については、こちらをご覧ください。

👉 [共同親権だと扶養控除はどうなる?どちらが受けられるかを解説]

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